【2月13日 AFP】英科学者らは11日、悪名高いイングランド王リチャード3世(Richard III)の全ゲノム配列を復元する計画を発表した。

 歴史上の人物の遺骨から抽出したDNAから全ゲノム配列を復元する試みは今回が初めてとなる。遺伝学者のテューリ・キング(Turi King)氏が率いるプロジェクトには、10万ポンド(約1700万円)の予算が充てられた。共同出資した英団体ウェルカムトラスト(Wellcome Trust)とリーバーヒュームトラスト(Leverhulme Trust)が声明で発表した。

 このプロジェクトについてキング氏は、「リチャード3世のゲノム配列を復元することは極めて重要なプロジェクトだ。リチャード3世のことが分かるみならず、DNAがいかにしてわれわれのアイデンティティをめぐる感覚や、われわれの過去と未来についての情報を与えているかについて議論を喚起することになる」と述べている。

 約1年間に及ぶプロジェクトでは、遺骨から取り出されたDNAを通じて、リチャード3世の髪の毛や瞳の色、背骨を曲げた脊柱側弯症が遺伝的なものだったかどうかなどが明らかになる可能性がある。

 リチャード3世の遺骨は2012年8月、イングランド中部レスター(Leicester)市内の駐車場で発掘された。遺骨は背骨が曲がり、戦闘での負傷も見られ、当時の証言と一致する特徴を備えていた。また発掘された骨から取り出されたDNAはリチャード3世の姉妹の子孫のDNAと合致している。

 英国の劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)は戯曲「リチャード3世」で、リチャード3世をおい2人を殺害して王位を勝ち取った悪党として描いている。

 だがリチャード3世の支持者たちは、リチャード3世がおいを殺害した証拠はないと述べ、リチャード3世の行った社会改革にこそ目を向けるべきだと呼び掛けている。(c)AFP