【1月31日 AFP】戦後の英国にとって社会福祉制度は誇りだった──しかし同制度に迫ったリアリティー番組への反響の大きさをみると、その考え方に大きな変化が訪れていることが分かる。

 英国の社会福祉制度をテーマにしたリアリティー番組『Benefits Street』の舞台となったのは英国第2の都市、バーミンガム(Birmingham)。ここでの失業率は16.5%と英国の全国平均の2倍に上っている。

 同番組を放送している「チャンネル4(Channel 4)」は、これまでにも論議を呼ぶ番組を多数送り出してきたテレビ局だ。英国では、社会福祉制度などの国からの援助に頼る人々の生活をめぐって意見が二分しているが、この番組をきっかけにその議論は一段と激しさを増している。

 毎週月曜放送の全5話からなる同シリーズ。舞台となっているのは、バーミンガム市内ジェームズ・ターナー(James Turner)通りだ。番組制作者によると、この通りは英国で福祉制度への依存度が最も高い地域の1つだという。

 番組に登場するのは、小売店から洋服を盗み出す方法を大胆に話す窃盗の常習犯や、社会保障制度を不正に利用したことがばれてしまったと楽しそうに話す夫婦だ。家賃を滞納していた女性が立ち退きを通知する男性に敵意をあらわにする場面も見られた。

 番組に対して、地域の一部住民は裏切られたと感じているようだ。ある男性は「ジェームズ・ターナー通りの『共同体の意識』を記録して肯定的に描きたいと聞いていた。しかし、実際は否定的な部分ばかりが映し出された」と英国放送協会(BBC)に対して不満をもらした。