【1月29日 AFP】エジプトの首都カイロ(Cairo)で28日、昨年軍によって解任されたムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領を、2011年の民衆蜂起の際に脱獄した罪に問う裁判が始まった。またカイロ市内では同日、警察幹部が銃殺される事件も発生しており、同国の不安定さが改めて浮き彫りになっている。

 モルシ氏は、他の21人の被告と共に入れられたガラス製のおりの中から、「私が誰だか分かっているのか。この共和国の大統領だ。おまえは誰だ」と怒りの声を発した。他の被告の中には、モルシ前大統領の出身母体のイスラム組織「ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)」の最高指導者ムハンマド・バディア(Mohammed Badie)氏も含まれていた。

 この裁判では、ムスリム同胞団や、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)、レバノンのイスラム教シーア派原理主義組織ヒズボラ(Hezbollah)のメンバーら数十人を含む計131人の被告が罪に問われている。裁判は、このうちの大半が不在のまま行われた。

 罪状を読み上げた検察官は、「外国の過激派と聖戦主義者ら800人が違法なトンネルを経由して国内に潜入、国境から60キロの範囲を掌握した。治安当局や政府の建物を攻撃し、多数の警察官を殺害した」「3つの刑務所が襲撃され、警察官と受刑者50人以上が殺害され、犯罪者2万人以上が逃亡した」として、「ムスリム同胞団の被告らは、ハマスとヒズボラと共謀し、無秩序状態を拡大させ国家の失墜を引き起こした」と述べた。同裁判はその後、2月22日まで休廷すると発表された。

 一方、治安当局者によるとカイロ市内では同日、モハメド・イブラヒム(Mohammed Ibrahim)内相の「専門部局」の長とされる警察幹部が、自宅を出た際にバイクに乗った武装集団に頭と胸を撃たれ、搬送先の病院で死亡した。またその数時間後にも、同市内の教会を警備していた警察官らに向けて武装集団が発砲。1人が死亡、2人が負傷した。容疑者のうち1人は拘束されたが、2人は逃走している。(c)AFP/Jay Deshmukh, Tony Gamal Gabriel