【1月23日 AFP】国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)は、米国の包括的な監視プログラムが世界に危険な手本を示し、各国政府がオンライン通信を広範に検閲する口実を与えていると、21日に発表した年次報告書で指摘した。

 米ニューヨーク(New York)に拠点を置く同団体は、90か国以上での人権をめぐる状況を評価する667ページの報告書を独ベルリン(Berlin)で発表した。

 報告書でHRWは、米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)がプライバシーを権利として尊重しないことにより、他の抑圧的な国々がデータの国外流出を防ぎ、表現の自由を弾圧していることの隠れみのに使われてしまうと述べた。さらに、世界のインターネット上のやりとりの大半が「米の領土または企業を経由」していることを鑑みれば、米政府は「世界の通信を唯一監視できる立場」にあり、人権を守る責任も特に大きいと論じている。

 同団体のケネス・ロス(Kenneth Roth)代表はAFPの取材に対し、中国やロシア、インドといった世界最大の人口を抱える国々がNSAの手法に倣い、プライバシー保護を徐々に軽視しつつあると訴え、またNSAの監視行動がきっかけとなり、多くの国々では事実上国内に限定されたインターネット環境を作ろうとしていると指摘した。

「インターネット企業に利用者のデータを国内にとどめるよう強制するようになるだろう。そうすれば、インターネット上で誰が何を言ったかを特定することも、批判的な発言を検閲し罰則を適用することもより容易になる」

(c)AFP/Deborah COLE