【1月18日 AFP】北欧のノルウェーで、2001年よりも前に出版された書籍をデジタル化してインターネット上で無料で公開するプロジェクトが進行中だ。無償の電子書籍サービスと作家の著作権との折り合いを付ける方法の一例となりそうだ。

 インターネット時代を迎え、書籍の利用度が大きく広がるネットの魅力と、印税収入が脅かされる事態との間で出版業界が揺れる中、ノルウェー国立図書館は書籍数万点のデジタル化を着々と進めており、著作権保護下にある作品を、著作権保持者の承諾を得た上で、同図書館のウェブサイト「bokhylla.no」で無料公開している。

 ノルウェー語で「本棚」を意味する同サイトでは現在、13万5000点の閲覧が可能で、対象作品はノーベル賞作家クヌート・ハムスン(Knut Hamsun)の名作から、現代の売れっ子作家ジョー・ネスボ(Jo Nesboe)のミステリー小説まで幅広い。最終的にはノルウェー語に翻訳された外国作品も含めて25万点をデジタル化する計画だ。

 ノルウェーの著作権の保護期間は著作者の没後70年だが、国立図書館のビグディス・モエ・スカーシタイン(Vigdis Moe Skarstein)館長によると、まだ著作権の保護下にある書籍をインターネットで無料閲覧可能にする試みは初めてだという。

 同館長は「多くの国の国立図書館が、所蔵作品の保管や利用を増やすといった理由から、デジタル化を進めているが、それらはすでに著作権が消滅している本だ。われわれは、この先1000年後まで保管するためには全書籍のデジタル化が必要だとなったときから(まだ著作権の保護下にある作品も含めることで)、ネット閲覧へのアクセスをできるだけ増やすことも重要だと思った」とデジタル化の意義を説明した。

 ノルウェー国立図書館は、デジタル化した書籍のネット公開について、ページ単位であらかじめ決めてある印税をまとめて支払う契約を、国内の主な作家や出版社などを代表する著作権者団体コピノル(Kopinor)と交わしている。コピノルから加盟メンバーに印税が分配される仕組みだ。この制度は現在試験施行中だが、閲覧可能作品が増えるごとにページ当たりの印税は下がっており、昨年は1ページにつき0.36クローネ(約6円)だったが、来年は0.33クローナ(約5.5円)へ引き下げられる予定だ。

 同図書館のサイトでは作家を保護する対策として、2000年よりも後に出版された作品は扱っておらず、また閲覧利用をノルウェー在住者と外国の場合は研究者に制限している。また作品のダウンロードはできない。

 また作者や出版社がネット公開を望まない場合には、サイトからの削除を要請できるが、そうした依頼は少なく、これまでに削除したのは3500点程度だという。(c)AFP/Pierre-Henry Deshayes