【1月17日 AFP】昨年11月にフィリピンを直撃し、数千人が死亡する壊滅的な被害を出した台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)──だがマリオ・レノス(Mario Renos)君(13)は意外にも、この台風のおかげで再び自分の足で歩けるようになる希望を得た。

 台風が襲う数か月前、レノス君は学校の帰り道でバイクにひかれた。だが、筋肉が萎縮した彼の両脚は今、バセイ(Basey)という町に赤十字(Red Cross)が設営した医療テントの中で、回復への一歩を踏み出している。

「学校に戻りたい」。レノス君はリハビリ用の手すりを握りしめ、歯を食いしばりながら言った。レノス君を介助するノルウェー人看護師Janecke Dyviさんは「彼がまた歩けない理由などありません」と語る。

 160万ドル(約1億6700万円)を投じて建てられ、欧州10か国から集まった医師や看護師たちが無償の医療を提供するこの病院は、同国で最も貧しい地域の一つであるサマル(Samar)島で、多くのニーズをみいだした。

 バセイの海岸沿いにも大きな被害をもたらした台風30号の被災者たちは今、この病院に押し寄せている。地元の人たちは親しみをこめてこの病院を「ノルウェー病院」と呼ぶ。

 しかも訪れてくるのは台風でけがをした人たちだけではない。被災した町の体育館の中に張られたエアコン完備の6つのテントには、ムカデにかまれた人や、ヘルペス、交通事故によるけが、心臓発作、やけどなど、さまざまな症状の患者が訪れる。