【1月16日 AFP】イスラエルの音楽オーディション番組「X Factor Israel」の優勝者に、人生の大半を出稼ぎ労働者として海外で働いてきたフィリピン人のローズ・フォスタネス(Rose Fostanes)さん(47)が輝き、国内外から祝福の声が集まっている。

 海外で働く約1000万のフィリピン人の1人であるフォスタネスさんは、14日夜に放映された同番組でフランク・シナトラ(Frank Sinatra)の「マイウェイ(My Way)」を歌い上げ、イスラエルとフィリピンの人々の心をとらえた。

 独身で同性愛者であることを公表しているフォスタネスさんには、イスラエル国内のテレビ番組やニュースウェブサイト、ソーシャルメディア以外にも、母国フィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領からも称賛が寄せられた。

 高齢者の介護人として働くフォスタネスさんは、イスラエルでの6年を含め、海外での出稼ぎを通じ、家族への仕送りを20年以上も続けている。

 フォスタネスさんのファンたちは、やはり40代後半で英オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント(Britain's Got Talent)」に出演・優勝し、その見事な歌唱力でスターとなった英国のスーザン・ボイル(Susan Boyle)にフォスタネスさんをなぞらえる。

■プロとしての活動はできない?

 だが番組での華々しい優勝をもってしても、フォスタネスさんがイスラエルで歌手として生計を立てることはできない。なぜならイスラエルでは外国人労働者がプロの歌手として働くことを禁じているからだ。

 イスラエル移民当局はAFPの取材に対し、もちろん歌うことはできるが、プロ歌手としてその歌唱力を用いることは法的に認められないと説明した。

 同日の番組はフィリピンでも生中継され、夜明け前という時間帯にも関わらず、多くの人々がテレビ画面に釘付けになった。そして最終的には、魂を揺さぶるフォスタネスさんの力強い歌声が審査員の心を動かす瞬間を目撃した。

 母国フィリピンのマニラ(Manila)で番組を見ていたフォスタネスさんの妹は「姉の一生の夢がかなったのよ。でも、外国で実現するなんで誰も思いもしなかったわ」と興奮気味に地元テレビのインタビューで語った。(c)AFP