【1月13日 AFP】世界の海面上昇の最大要因の1つ、南極のパインアイランド氷河(Pine Island Glacier)の融解が取り返しがつかないほど進行しており、今後20年以内に海面が今より最大1センチ上昇する恐れがあるとの研究報告が12日、英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。

 この研究報告で、仏ジョセフ・フーリエ大学(Joseph Fourier University)のガエル・デュラン(Gael Durand)氏は、パインアイランド氷河は「自律的後退の段階に突入しており、今後も氷河の縮小が取り返しがつかないほど続くだろう」と指摘している。

 同氏と国際研究チームは、3種類の異なるモデルを使い、海面下で「棚氷」と陸地が接する領域の「接地線」に基づいてパインアイランド氷河の今後を予測した。棚氷とは、大陸を覆う氷床が海にせり出して浮かんでいる部分だ。

 この接地線は、過去10年間で約10キロ後退した。また論文では、「おそらく一定ではないが40キロの後退が進行中と思われる」とも記されている。

 パインアイランド氷河は、それ自体が巨大な氷の川であるため、西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)からの氷の全消失量の2割に単独で関与しているという。

 論文によると、同氷河では1992~2011年の間に年間平均200億トンの氷が消失しているとされ、また今後はこの消失量が年間1000億トン以上にまで増加する可能性も高いという。この数字は、今後20年の間に3.5~10ミリの世界平均海面水位の上昇に相当する。(c)AFP