コレラ菌の進化の解明に光、19世紀の患者の腸使った研究
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【1月13日 AFP】1800年代半ばにコレラに感染した米国人の腸から、コレラ菌の進化を解明するための新しい手掛かりが見つかった──8日の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」で発表された研究結果は、今後の流行の予防につながる可能性もある。
研究者らは米フィラデルフィア(Philadelphia)の博物館で瓶に入れられて保存されていた腸のサンプルから19世紀のコレラ菌のゲノムを再構築した。再構築されたコレラ菌は現在のものよりも古い型のもので、研究によると、この19世紀の株はより新しい型のコレラ菌「エルトール型」より伝染力が強い可能性があるという。
研究者らは今回の発見が、エルトール型のより詳細な理解につながることを期待している。エルトール型は1960年代ごろに流行が始まった株で、ハイチ大地震の後に流行したのもこの型によるものだ。
「感染症の進化の解明は、時を経てどのように変化が生じるのか、人間に感染するときに何が起きるのかなど、疫学を理解するのに非常に重要だ」とカナダ・マクマスター大学(McMaster University)のヘンドリック・ポイナー(Hendrik Poinar)准教授(進化遺伝学)は指摘する。
コレラのDNAは軟部組織からしか検出できないため、今回の研究では保存された内臓は極めて重要だった。19世紀に流行したコレラの多くは、インドのベンガル湾沖で生まれたとみられている古い型によるものだ。
今回の研究で使われた検体は、フィラデルフィアの「College of Physicians of Philadelphia」が1858年に設立したムター博物館(Mutter Museum)に保存されていた腸の一部。腸は1849年の大流行の際に亡くなった男性のものだという。(c)AFP