【1月8日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)の手紙書き職人シャキル・アーメド(Shakil Ahmed)さんは、他人の秘密を守るこの仕事を誇りにしている。

 アーメドさんは何十年もの間、ムンバイの読み書きができない労働者の代わりにペンを持ち、恋文や仕送りに添える手紙の代筆をしてきた。売春婦たちが故郷に仕送りをするときには、どうやって稼いだかは伏せて手紙をしたためたものだ。

 だが今日では、そんな長い文章を綴ることはめったにない。宛名を書く仕事があればいいほうだ。「たくさんの人がやってきたものだ。私たちは食べる暇さえなかった。だがこの7年ぐらいで仕事が減ってきた」と、アーメドさんは使い古した木製の机の後ろで語った。

 仕事場は、ムンバイの歴史ある郵便局の向かいにある。「できるだけ長くこの仕事を続けたいとは思っているが、でもどれぐらい長くやれるかは分からない」という。職場にかつては17人いた手紙書きが、今は8人に。その仕事も、小包の包装や書類の記入といったものに変わってきている。

 アーメドさんの机の上には、山のように積まれた包み用の布、古いペン立て、手紙に封をする封ろう、それに押すイニシャル入りのスタンプなどが置かれている。仕事に使う道具は40年前、14歳のときにこの仕事を始めたときからほとんど変わっていないが、人々の通信方法は大きく変わった。