【1月6日 AFP】南極海で氷に阻まれているロシアの調査船「アカデミック・ショカリスキー(MV Akademik Shokalskiy)」号と、その乗客の救助を支援した中国の砕氷船、雪龍(Xue Long)号の2隻が動けなくなっている問題で5日、米沿岸警備隊(US Coast Guard)の砕氷船が派遣され現地へ向かった。

 米沿岸警備隊の「ポーラースター(Polar Star)」号は、前月24日から立ち往生しているショカリスキー号の援助へ向かってほしいとするオーストラリア当局の要請を受け入れた。ショカリスキー号には、今も船内に残っている乗組員22人の他、当初は科学者22人、観光客26人、報道陣4人が乗船していた。

 ショカリスキー号に乗船していた74人のうち乗客52人は年明けの2日、中国の雪龍号に搭載されていたヘリコプターで全員無事救助されたが、今度は雪龍号自身が厚さ最高4メートルの氷に囲まれ身動きできなくなっており、米国のポーラースター号は両方の船の脱出支援に当たる見込み。雪龍号に乗り込んでいる国営新華社(Xinhua)通信の記者によれば、同船は開放水域から21キロの地点で立ち往生している。

 ポーラースター号は、南極にある米マクマード基地(McMurdo Station)への物資補給船のために氷を砕いて水路を作ることを任務とし、12月初旬に米国を出発。豪海洋安全局(Australian Maritime Safety AuthorityAMSA)によれば5日、シドニー(Sydney)から南極海へ向かった。ショカリスキー号と雪龍号がいる南極大陸沖のコモンウエルス湾(Commonwealth Bay)に到着するには7日かかる見込み。

 全長122メートルのポーラースター号は時速5.5キロで前進しながら、厚さ1.8メートルの氷を砕くことができる。一度船を後退させてから全速で前進して氷盤を砕く「ラミング」と呼ばれる航法ならば、厚さ6メートルの氷も砕けるという。

 中国国家海洋局極地考察弁公室(Chinese Arctic and Antarctic Administration)の曲探宙(Qu Tanzhou)主任によれば、雪龍号の任務は中国にとって30回目となる南極大陸調査で、研究基地の新設なども含まれていたが、計画はすべて見直さなければならなくなった。

 ショカリスキー号の遭難は一部から批判を浴びている。同号を救助するために、これまでポーラースター号と雪龍号の他、オーストラリアのオーロラ・オーストラリス(Aurora Australis)号、フランスのアストロラーベ(Astrolabe)号の4隻が、本来の任務を中断している。

 フランス極地研究所(French Polar Institute)のイブ・フルノ(Yves Frenot)所長は、同国のアストロラーベ号は予定していた2週間の海洋調査を中止せざるを得なくなったとしながら「われわれはまだ幸運なほうだ。中国(の雪龍号)は科学研究全体の中止を余儀なくされ、オーストラリアはひと夏全部を棒に振った」と非難している。(c)AFP