食に対する意識見直す活動、「味覚の一週間」今年も豪華な顔ぶれで開催
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【12月27日 MODE PRESS】1990年、ジャーナリストで料理評論家のジャン=リュック・プティルノー氏とパリの350人のシェフたちが次世代を担う子どもたちにフランスの食文化をきちんと伝えようと、味覚の教育活動の一環としてフランスで始まった「味覚の一週間」。
文化遺産でもある食文化を子供たちに伝承すべく、「味覚の授業」「味覚の食卓」「味覚のアトリエ」の3つの柱で構成されたプログラムを実施。仏・国民教育省、農業漁業省などの政府機関なども参画する国をあげた「食育」へと成長している。
日本では2011年から「味覚の一週間」の考え方を日本の食文化に適した形で再編、日本の子どもたちの豊かな感性の発達を目的に、開催。現在、全国22都道府県、76の参加校と約6000人もの生徒たちに向け、発信しており、約200名にも及ぶシェフ、料理人、生産者がボランティアで小学校を訪れ、味の基本となる5つの要素、「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」「うま味」や、味わうことの楽しみを伝えている。
■「味覚の一週間」のはじまり
そもそも、事の始まりは、1990年当時、フランスでは子供たちを取り巻く食文化の乱れが深刻な問題になりはじめたころ。90年代以降、肥満者が急速に増え、肥満症の低年齢化(肥満児の割合は1980年の5%から16%に増加)が進み、ファストフード店の出店が相次ぎ、街並にも変化が現れ始めたときでもあった。
また昨今フランスでは、90%以上の夫婦が共働きのため、料理を作る時間がなくなり、食卓を囲む時間が減ってきており、さまざまな問題を早くから懸念していたプティルノー氏が、次世代を担う子供たちに自国(フランス)の食文化をきちんと伝えようと一念発起。その熱い想いを原動力に、フランス全土へと活動を広げていった。
1992年にはこれらの活動は『味覚の一週間』という名称になり、全国民がフランス料理という国家遺産の素晴らしさを子供たちが発見・学習する場として、国を挙げた「食育」活動に成長していく。
■日本でも問題視、食に対する認識
フランスで起きている問題は、近年日本でも同様に問題視されてきている。孤食や偏食、食に対する認識の低さや環境の変化など、今となっては日常的に社会問題としてメディアも取り上げるようになってきた。そんななか、2011年に日本でも始まった「味覚の一週間」に関する活動は、日仏メディア交流会会長の磯村尚徳氏、医学博士で学校法人服部学園服部栄養専門学校理事長・校長の服部幸應氏やオテル・ドゥ・ミクニ、Mikuni MARUNOUCHIオーナーシェフの三國清三氏を筆頭に、料理研究家の藤野真紀子氏、内坂芳美氏、柳原一成氏などが主要メンバーとなり、現在全国規模で展開している。
■継続は力なり、食育への取り組みは続く
3回目を迎えた今年は、顔ぶれもさらに豪華になって初日を迎えた。今注目のブーランジェ・パティシエのゴントラン・シェリエ氏やフランス・エリゼ宮料理長のキヨーム・ゴメズ氏、ラ・メゾン・デュ・ショコラ/シェフ・パティシエのニコラ・クロワゾー氏、レフェルヴェソンスのシェフ生江史伸氏、日本料理「かんだ」の神田裕行氏、中国料理「Wakiya一笑美茶樓」の脇屋友詞氏、フランスでいま最も著名な人物、精肉業・熟成士のイヴ=マリ・ル=ブルドネック氏など。全国の参加小学校で、実際にシェフらが授業を担当した。
ラ・メゾン・デュ・ショコラ/チェフ・パティシエのニコラ・クロワゾー氏は、チョコレートを通して感じる甘い、苦いなど一言では表現しきれない複雑な味覚を小学生たちに体験してもらった。精肉業・熟成士のイヴ=マリ・ル=ブルドネック氏は、黒板に書いた牛の画をみながら、どの肉がどの部位になるのかを子供たちにレクチャー。食べることを単片的に意識するのではなく、知ることによってより深く、五感を使って楽しむ方法を伝えた。
また、服部栄養専門学校で開催されたシンポジウムには、国内外の有名シェフらが集まり、自らの経験を語り技術を披露。全国から集まった調理師専門学校の学生やプロたちに味覚や料理について講義した。
■「食」に対する価値観に変化を!
普段、我々の身近な「食」とはなにか?単に「食べる」という行為や欲求を満たすだけではない。それは一言で語り尽くせないほどに、奥の深い文化であり、知識、教養のひとつとも捉えられる。しかし昨今、時代や環境の変化によって、「食べる」ことへの意識の低下はもちろんのこと、その価値観は一昔前と違って随分変化している。戦後間もないころに、食べることさえもままならなかった時代から半世紀以上が経った今、あらためて「食」に対するひとりひとりの価値観はもちろんのこと、社会全体で一丸となって認識を高めていくことが今後の日本には必要とされる。
「自分の身体を作っているのは、日々口にするもの。そのひとつひとつを、丁寧に吟味しながら生活することが今必要とされています。そして、お米の一粒一粒に感謝しながらいただくこと、牛や豚、魚の命をいただいて私たちは生きているんだということをもっと理解してほしい。それは命の尊さであり、根本にあるのは、私たちの築き上げた文化でもある。そういったことをこの活動を通して、次の世代のひとたちにも伝えていきたい」と事務局長の瀬古篤子さん。すでに2014年度の準備が始まった。来年もますますパワーアップして活動に取り組むと意気込みを語ってくれた。
・「味覚の一週間」 公式サイト:http://www.legout.jp/
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