【12月25日 AFP】11月上旬に超大型の台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)に直撃されたフィリピンの被災地は25日、豪雨に見舞われ、クリスマスを祝福しようとする同国の敬虔(けいけん)なキリスト教徒たちの思いはくじかれた。

 台風30号で壊滅的な被害を受けたレイテ(Leyte)島東部タクロバン(Tacloban)で被災者のために作られた仮設のテント村では、降り続く雨の中、ビニール製のレインコートを着た子どもたちのグループがハロウィーンのようにテントをまわり、出会った人々にキャンディーやコイン、小さなプレゼントなどをねだった。

 しかし、主婦のスーザン・スカナさん(53)は、テントの屋根代わりになっている白い防水シートの下で落ち込んだ表情で座っていた。5人の子どもたちと家族でクリスマスを祝っていたはずの今、スカナさんが思い浮かべるのは、亡くなった夫のことばかりだった。「クリスマスでなくても、彼のことを考えないときはない」。電話工事の作業員だった夫のオスカーさんは11月8日、タクロバンのスラム街サンホセにあった家々を大波が流し去ったときに、海に消えたと考えられている。

 タクロバンの多くの生存者と同様、悪天候はスカナさんを緊張させる。「雨が降り続けると怖い。(台風のときに)あったことを思い出すから」だという。

 台風30号では6100人が亡くなり、2000人近くが行方不明となった。その多くはタクロバンと周辺地域の人々だ。台風の多いフィリピンでも史上最大規模の被害となった。フィリピン中部の島々では約440万人が家を失い、現在は援助機関などが提供している仮設テントか、壊れた家のがれきや倒れた木を使って自分たちで建てた粗末な小屋に暮らしている。(c)AFP/Cecil Morella