インフルエンザワクチンは女性により効果的、研究
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【12月24日 AFP】インフルエンザワクチンは男性よりも、女性に高い効果を発揮するとの論文が、23日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に掲載された。テストステロンの分泌量が多い男性は免疫反応が抑制されていたという。
米スタンフォード大学(Stanford University)や仏国立保健医学研究所(Inserm)などの研究者からなる研究チームによると、細菌やウイルス、寄生生物による感染症は男性の方がかかりやすく、また、男性には、女性ほど黄熱病やはしか、肝炎などのワクチンの効果が上がらないことは以前から知られていた。しかし、これまでその理由は明確に説明されていなかった。
調査は男性34人、女性53人を対象に行われたもので、インフルエンザワクチンに対する抗体反応が弱い男性は皆、テストステロン値が高かったという。一方、スタンフォード大学の声明によると、テストステロン値が低い男性の免疫反応は、女性と同程度だった。
同大学のマーク・デービス(Mark Davis)教授(免疫学)によると、今回の研究で、免疫反応が弱いこととテストステロンとの直接的な関係が示されたわけではない。テストステロン値が高いことと関連性がある遺伝子群の活性化によって、免疫系の反応が低下することが確認されたのだという。
ここには進化論的に矛盾があるようにみられる──強さやリスクを取りたがる傾向と、免疫系を弱体化する作用と、その両方に影響するホルモンが、なぜ自然淘汰により選ばれたのだろうか。研究チームはこの点を検討した。
研究チームは、先史時代の男性の役割は狩りや戦闘であり、けがをし、結果として感染症にかかりやすい立場にあったと推測した。
これらの感染症に反応できる免疫系は進化論的に優位性がある。だが一方で、その反応が過度であれば、病原菌そのものよりも免疫自体が危険になることもある。
それ故に、免疫反応のより弱い男性の方が生存に適していたのかもしれないと、研究チームは仮説を述べた。(c)AFP