シリアで医療活動中の英国人医師、拘束下で不審死
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【12月20日 AFP】内戦下のシリア北部アレッポ(Aleppo)で、病院で医療ボランティア活動に当たっていた英国人医師が、1年以上にわたってシリア当局に身柄を拘束された末に収監されていた施設内で死亡していたことが20日までに、明らかになった。シリア当局は自殺だと発表したが、英国政府は「シリア政府によって事実上、殺害された」と非難している。
死亡したのは、英ロンドン(London)で整形外科医をしていたアッバス・カーン(Abbas Khan)医師(32)。民間人対象の医療ボランティア活動のため昨年シリア入りしたが、シリア当局に身柄を拘束された。家族が17日に英メディアに語ったところによると、シリア政府は先にカーン医師を週末までに釈放すると家族に伝えていたが、16日に突然「死亡した」と通知してきたという。
英国のヒュー・ロバートソン(Hugh Robertson)外務閣外相は17日、「カーン医師がシリア当局から受けた扱いがどのようなものであれ、弁解の余地はない。シリア当局は、内戦で傷ついたシリアの人々を助けるため同国に滞在していた英国人を事実上、殺害したのだ」と強く批判した。
これに対し、シリアのファイサル・ミクダード(Faisal Muqdad)副外相は同日、カーン医師は自分のパジャマで首をつったと発表。また国営シリア・アラブ通信(SANA)は、同医師について「シリアに不法入国し、許可されていない活動を行った」「死因は首つり自殺で、遺体に暴力を受けたり抵抗したりした痕跡はなかった」と報じた。
しかし、カーン医師の家族は、今週中に釈放されることは本人も知っており「喜んでその時を待っていた」と述べている。
ミクダード副外相はAFPの取材に19日、カーン医師の遺体は現在、家族の要請に基づいてシリア当局と赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross、ICRC)が最終的な検視を行っており、それが終了次第、20日にも隣国レバノン・ベイルート(Beirut)にある英国大使館に引き渡されると述べた。また、カーン医師が拷問を受けていたのではないかとの疑惑については「もし、われわれが彼を傷つけようと思っていたなら、もっと早くにやっている。収監施設での待遇は非常に良かった」と反論し、疑惑を否定した。
シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権は、3年近くに及ぶ内戦で、拘束した多数の人々を拷問・殺害しているとして非難されている。シリア内戦ではこれまでに推計12万6000人が死亡し、数百万人が避難生活を余儀なくされている。(c)AFP