■メロドラマは日々の「セラピー」

メキシコや中南米で「テレノベラ」といわれるテレビの連続メロドラマと似ている韓流ドラマを通じ、キューバ国民はまったく異質な外国の世界を目にしている。キューバは北朝鮮とは国交があるが、韓国とはない。

 キューバでは「お嬢さまをお願い!」の主演としての方がよく知られている韓国の歌手、尹相鉉(ユン・サンヒョン、Yoon Sang-Hyun)さんは最近キューバを訪問した際に、韓流ドラマについてこう述べた。「韓国人とキューバ人には似ているところがたくさんある。コメディがあり、ドラマがあり、ちょっとロマンスもあって、けれど深刻になりす過ぎない。現実の人間関係と同じだ」

 一方、ブラジルのテレノベラもキューバの根強いファンを失っていない。スサナ・スアレス(64)さんは1980年代に放映スタートした長寿のテレノベラを1回も見損ねたことはない。今キューバでしのぎを削っている4本のテレビドラマのうち、国内制作のものは1本だけで、あとの3本はそれぞれ韓国、ブラジル、アルゼンチンの制作だ。

 多くのキューバ国民同様、月わずか8ドル(約800円)という年金で暮らしているスアレスさんにとって、メロドラマは日々の「セラピー」だという。「毎日の問題も何もかも、少なくともちょっとの間は全部忘れられる。キューバではストレスの毎日だから」というスアレスさんは1日2時間をドラマ視聴に費やしている。書籍の編集者だというヤイマ・ロサエンさん(32)もこう述べた。「近所同士の会話では、実際の生活についてよりも、テレビドラマについて話しているわ」(c)AFP/Rigoberto DIAZ