【12月13日 AFP】「ドライ・マティーニ そのまま渡してくれ、自分でシェイクするから」──英スパイ小説「007」シリーズのジェームズ・ボンド(James Bond)がもしも実在の人物だったら、こんな風に振る舞うだろうと英国の医師らが想像している。

 英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)に風変りな論文を発表した英国の医師3人のチームは、作家イアン・フレミング(Ian Fleming)が書いた原作14 作品を読破した上で、ウエートレスの1人称で書かれているためボンドの行動を知る情報源としてふさわしくない「007 わたしを愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)」と短編集の「オクトパシー(Octopussy and The Living Daylights)」の2作を除く12作品を分析し、ボンドがアルコールをいつ、どれだけ飲んだのかを調べた。

 その結果、ボンドの酒量は多すぎ、現実の世界にいたら、慢性アルコール依存症の症状で手が震えているだろうという。また統計的にいえば、ボンドはアルコール、さらにタバコに関連する疾患が原因で50代半ばで死んでいるはずだとしている。

 また論文は「女性に手が早い」ボンドの性的能力にも疑問符を付けている。直前に飲んでいたアルコールの量を考えれば、ボンドがベッドの中での任務を完遂できた保証はないという。

 分析対象となった日数は計123.5日だったが、その中で幽閉されたり入院したりしたためにボンドがアルコールを口にしなかった日は36日間だった。残りの87.5日間で、この英国のトップスパイは1150ユニットのアルコールを摂取していた。1週間に換算すると92ユニットで、適量とされる量の4倍にもなっていた。ユニットとは、酒の種類にかかわらずアルコール摂取量が分かるようにした単位のこと。

 論文は「ジェームズ・ボンドの飲酒量は、複数のアルコール関連疾患と早死にの高いリスクを招くものだ。小説の中で描かれている身体的、精神的、性的機能は、これだけの量のアルコールを摂取する人物から想像できる状態と一致していない」と指摘し、さらに「ジェームズ・ボンドは、自分でカクテルをステアしたくても、アルコールによる手の振戦(震え)があって、できなかっただろう」と述べている。(c)AFP