星の生命居住可能領域、従来説より大きい可能性 仏研究
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【12月13日 AFP】悪い知らせと良い知らせがある──悪い知らせは「地球の海が将来、干上がってしまう」こと、良い知らせは「それが起きるのが10億年ほど先」ということだ。
これは11日に英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された、いわゆる「ゴルディロックス・ゾーン(生命居住可能領域)」に関する最新の研究により導き出された結論だ。恒星からの距離がこの領域内にある岩石惑星では、水が氷や水蒸気ではなく液体で存在できる。
惑星の気温はご存じの通り、高すぎず低すぎず、生命に不可欠な水を保持するのにちょうどよい温度でなければならない。
今回の研究で、仏ピエール・シモン・ラプラス研究所(Pierre Simon Laplace Institute)のジェレミー・ルコント(Jeremy Leconte)氏率いる研究チームは「恒星は年を取るにつれて明るさ(光度)が増す」という宇宙物理学でよく知られた現象を詳しく調べた。
研究チームは地球でのシミュレーションを行い、太陽の光度の増加が、最終的には手に負えないほどの温室効果をもたらすとの結論に至った。
ある一定のポイントを境に、次のようなことが起きると予想される。海の温度が上昇して発生する水蒸気が増えると地表温度が上昇する。地表温度が上昇すると蒸発する海水の量もまた増える。このサイクルは温暖化の加速を意味するという。水蒸気は温室効果ガスの1つだ。
研究チームのモデルによると、今後約10億年で地球の表面にある液体の水は完全に消滅し、すっかり干上がった地表だけが残される。
■生命居住可能領域はもう少し大きい?
従来のモデルでは、地球は単純で一様な気候システムを持つとしてシミュレーションを行う傾向があった。こうしたモデルでは通常、蒸発が始まる時期は現在から早くても約1億5000万年後と地質学的には比較的短い時期に設定されている。
しかし今回の研究での技術的に高度なモデル化においては、1平方メートル当たりの太陽熱や、季節、蒸発サイクルなどを考慮した3Dシミュレーションも含まれている。
仏国立科学研究センター(National Centre for Scientific Research、CNRS)は海が失われる時期について、今回の推定値は従来考えられていた時期よりさらに「数億年後」となっていると報道発表の資料で指摘した。
11日に発表された論文では、ゴルディロックス・ゾーンはこれまで考えられていたよりもやや大きいかもしれないと結論付けられている。
論文によると、太陽ほどの大きさと年齢の恒星では、ゴルディロックス・ゾーンは0.95天文単位(AU)から始まるという。
1AUは1億4960万キロで、地球と太陽の間の平均距離に相当する。平均距離となっているのは、地球の周回軌道がわずかに楕円(だえん)形になっているからだ。
大きさが地球と似ている金星は0.75AUの位置にあり、太陽に若干近すぎる。一部の宇宙生物学者らの説によると、幼年期には太陽の光度が現在より低かったため、金星には海があった可能性もあるという。しかし現在の金星は、灼熱でからからに乾燥した不毛の地で、舞い飛ぶ分厚い二酸化炭素(CO)の雲に覆われている。
今回の研究結果は、太陽系外惑星と呼ばれる、太陽系の外にある恒星の周りを回っている惑星を理解するのに役立つ可能性があると研究チームは述べている。
目標はゴルディロックス・ゾーンにある岩石惑星を見つけることなので、同ゾーンの幅が考えられていたより広いとすると、これにより統計的な可能性が高まることになる。
これまでに天文学者らが発見しているのは、生命の居住に適さないガスでできた惑星か、太陽に近すぎる岩石惑星で、大気が存在したとしてもすべて剥ぎ取られてしまうと考えられるものばかりだ。(c)AFP