インド、WTOで補助金の主張堅持 食糧不足と選挙が背景
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【12月11日 AFP】インドの首都ニューデリー(New Dehli)のスラム街で暮らすアンジュ・シャルマさん(60)は家族のためのわずかな配給食糧-米1袋と豆半缶-を指さした。
窓のない1部屋だけの粗末な家で、開けっ放しのさびた扉からはゴミ捨て場の臭いが漂ってくる。シャルマさんの膝の上には痩せ細った2歳の孫が座っている。部屋には11歳と12歳の男の子の孫もいて、2人とも年齢の割に背丈がとても低い。シャルマさんは「食糧はあるが、子どもたちにやるには全然足りない」と話した。
急速な経済成長により超大国のステータスを目指すインドだが、食糧不足がまん延している。来年に総選挙を控える同国は先週、インドネシア・バリ(Bali)島で開かれた世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)の閣僚会議で、「栄養不良のまん延」に立ち向かうため、大規模な食糧補助金制度の恒久化を強く求めた。アナンド・シャルマ(Anand Sharma)商工相は「食糧安全保障に関して交渉の余地はない」と断言した。
国連(UN)の調べによると、インドの飢餓人口は世界全体の4分の1を占める。インド下院は今年8月、貧困層に食糧を低価格で提供する食糧安全保障法を可決。食料補助金の上限を生産額の10%とするWTOの規定に同法が抵触することを恐れるインドは今回の会議で免除を求め、最終的に、恒久措置ができるまでインドに特例を認めることが合意された。
食糧安全保障法により、全人口12億人のうち8億人に、米や小麦、雑穀5キロが市場価格を下回る値段で毎月、提供される。また、児童には昼食が提供され、6歳未満の子どもには栄養食品が与えられる。
政府のこうした政策に批判的な人々は、著しい経済減速に直面する時期に、市場価格を大幅に下回る穀物供給を行えば財政が圧迫されるとみている。総選挙を控え、与党・国民会議派(Congress)の伝統的な支持者である貧困層から票を集めるための策だと指摘する声もある。
シンクタンクIndia Focusのスバス・アグラワル(Subhash Agrawal)氏はAFPに「国民会議派のDNAはポピュリズムだ。食糧安全保障法が票を集めるのに役立つと考えている。だから、WTOで譲歩して主要政策の実現を危うくするわけにはいかなかった」と述べた。(c)AFP/Penelope MACRAE