国家による監視の制限、世界の作家500人が国連に要求
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【12月12日 AFP】500人を超える世界の著名作家が10日、国家による大衆監視は基本的自由を侵害する行為だとして、国際法の制定を求める署名を国連(UN)に提出した。南アフリカのJ・M・クッツェー(J.M. Coetzee)氏やドイツの ギュンター・グラス(Gunter Grass)氏などノーベル文学賞受賞者も名を連ねている。米政府による監視活動については今年6月、米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)に勤務していたエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者によって暴露された。
「大衆監視に反対にする作家たち(Writers Against Mass Surveillance)」と銘打った署名は、国家による広範囲なインターネット通信傍受を民主主義の侵害と位置づけ、そうした監視を制限する「デジタル著作権」を定める国際法の新設を求めている。世界80か国以上、562人の作家が署名し、英ガーディアン(Guardian)紙など各国の新聞約30紙に掲載された。
作家たちは署名と共に声明を発表し、大衆監視がすべての市民を容疑者と疑って扱うものだと批判した。
「大衆監視の規模は、この数か月で誰もが知るものとなった。マウスを数回クリックするだけで、国家は個人の携帯端末や電子メール、ソーシャルネットワーク、インターネット検索などにアクセスできる。インターネット企業との連携の下、個人の政治的な傾向や活動を追跡することができ、個人のデータを収集・保管している」
「民主主義の基礎となる柱は、人格を不可侵のものとする個人の尊厳である。すべての人には、見張られず、妨害されない権利がある。しかし大衆監視を目的とした国家と企業による技術開発の乱用により、この基本的人権がまったく無効とされている」
「監視下に置かれた個人はもはや自由ではなく、監視下に置かれた社会は民主主義ではない。民主的権利の有効性を保つには、実世界と同様に仮想空間でもそれが認められなければならない」
作家たちはまた、自分のデータがどのように収集され、保管されるかを自分で決め、そのデータがどのように使用されているのかを知り、不正な利用があれば削除を要求できる権利を求めた。
「すべての国家と企業に、これらの権利を尊重するよう要求する。国連には、デジタル時代における市民的権利の保護が最重要課題であるとの認識、そしてデジタル著作権に関する国際法の制定を求める。また各国政府にはその協定に調印し、従うよう求める」
■署名した主な作家
ノーベル文学賞受賞者ではクッツェー氏とグラス氏に加え、オーストリアのエルフリーデ・イェリネク(Elfriede Jelinek)氏、スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル(Tomas Transtroemer)氏、トルコのオルハン・パムク(Orhan Pamuk)氏の計5人が署名している。
ブッカー賞受賞者ではマーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)氏、ジュリアン・バーンズ(Julian Barnes)氏、トーマス・キニーリー(Thomas Keneally)氏、カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)氏、イアン・マキューアン(Ian McEwan)氏、マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje)氏、アルンダティ・ロイ(Arundhati Roy)氏らが署名した。
さらにコルム・トイビン(Colm Toibin)氏やマーティン・エイミス(Martin Amis)氏、ライオネル・シュライバー(Lionel Shriver)氏、ルイ・ド・ベルニエール(Louis de Bernieres)氏、アービン・ウェルシュ(Irvine Welsh)氏などの著名作家も名を連ねた。(c)AFP