【12月11日 AFP】ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)大統領は10日、同国の欧州連合(EU)との連合協定締結をめぐって続く反政権デモ隊との激しい対立状態を打開するため、首都キエフ(Kiev)で歴代の3大統領やEUのキャサリン・アシュトン(Catherine Ashton)外交安全保障上級代表(EU外相)と相次いで会談した。しかしこの2会談後も、ヤヌコビッチ氏は親欧州の反政権勢力が国家の安全保障を脅かしていると非難、同氏の対決姿勢には変化がないことがうかがえる。

 ヤヌコビッチ政権がロシアからの圧力を受けてEUとの連合協定を拒否したことについて、いまだ数千人が続けている抗議活動は、気温が氷点下まで下がる中3週目に突入したが、当局と反政権派の双方共に妥協の気配すら見せていない。

 この会談後アシュトン氏の報道官はマイクロブログのツイッター(Twitter)で、「ヤヌコビッチ大統領との重要会談であらゆる関連議題を討議」したと述べ、この会談が3時間半に及んだことには触れたが、詳細には言及しなかった。またAFP特派員によると、アシュトン氏は欧州からの支持を示すため会談後自ら同市の独立広場(Independence Square)にあるデモ隊の拠点を訪問、デモ参加者は声をそろえて「ヨーロッパ」と叫び、熱烈な歓迎を示したという。

 アシュトン氏との会談に先立ってヤヌコビッチ氏と異例の協議に臨んだのは、レオニード・クチマ(Leonid Kuchma)、レオニード・クラフチュク(Leonid Kravchuk)の両元大統領と、ビクトル・ユーシェンコ(Viktor Yushchenko)前大統領の3氏。

 しかしこの歴代大統領との会談も直接的な解決策にはつながらなかったものとみえ、ヤヌコビッチ現大統領は国営テレビ放送で発表されたコメントで「革命の呼び掛けは国家の安全保障を脅かす」として、「この暗い1ページをめくり同じことが再び起こらないことを希望する」と述べた。

 しかし一方でデモ隊への配慮も見せ、政治と自由貿易の面で鍵となる合意に関する交渉を再開するため、11日にEU本部があるベルギー・ブリュッセル(Brussels)へ特使を派遣することを明かし、またEUとの首脳会談が予定されている来年3月までには、懸案の連合協定について何らかの決定を下すつもりだと付け加えた。(c)AFP/Dmytro GORSHKOV, Zoya ZHMINKO