【12月5日 AFP】悪天候の海で転覆した船内に約3日間閉じ込めらながら生き延び、救助されたナイジェリア人船員の救出劇の全てを記録した驚くべき映像が、このほど公開された。

 ハリソン・オケネ(Harrison Okene)さん(29)は、乗船していたタグボート(引き船)が今年5月26日にナイジェリア沖で転覆・沈没した際、死亡したと思われていた。だが、実は上下逆さまになって水深30メートルに沈んだ船内の1室に残されたわずかな空間で、かろうじて生存していた。

 公開された映像は、行方不明者の捜索に当たっていたダイバーのマスクに装着されたカメラが捉えたもの。遠隔指示を出す捜索チームが「(遺体を)見つけたな?」と声をかけた瞬間、水中からしわだらけの手が伸びてきて、ダイバーの手をつかむ様子が映っている。

 ダイバーは驚きの声を上げ、捜索チームメンバーは「生きている!生きている!」と叫んでいる。

 黒い短パンしか着ておらず震えるハリソンさんに対し、ダイバーは慎重に安全ベルトを装着。ほっと息をついたハリソンさんにペットボトルの水を飲ませると、ウエットスーツと呼吸具付きマスクを着用させた。そこで捜索チームがマスクの無線を通じ、次のように話し掛けている。「聞こえるか?今マスクをかぶせたから、君は息ができるようになった。パニックを起こすんじゃないぞ。これからわれわれが君を家に連れて帰る。いいな?」

 名前を聞かれたハリソンさんは「ハリソン、ハリソンだ」と応じ、62時間前に転覆した船に料理人として乗っていたことを明かした。それから、損傷した船内をダイバーに連れられて移動し、潜水装置で海上に浮上。ハリソンさんが潜水装置に入った瞬間、捜索チームは「よくやった!君は生存者だ!」と叫んでいる。

 この映像は、捜索・救出に当たったオランダの企業「DCNダイビング(DCN Diving)」がAFPに提供したもの。同社は電子メールで、映像を公開した理由を「この素晴らしい救出劇に携わった全ての人々に敬意を表するため」と説明している。(c)AFP