【12月4日 AFP】フィリピンに本部を置く国際稲研究所(International Rice Research InstituteIRRI)は3日、世界で最も重要な食用作物の1つであるコメの収量を飛躍的に増加させる可能性がある、驚くべきイネ遺伝子を発見したと発表した。

「SPIKE」と呼ばれているこの遺伝子をインド型のイネ(インディカ米)の近代品種に導入すると、収量を13~36%増やせることが予備試験で明らかになったという。インド型品種は、世界で最も広く栽培されている種類のイネ。

 IRRI主導のSPIKE品種改良計画を統括する育種研究者の石丸努(Tsutomu Ishimaru)氏によると、SPIKE遺伝子を導入した新品種の試験が、アジアの発展途上国数か国で進められているという。石丸氏は、「この新品種がリリースされれば、これらの地域の食糧の安全保障に貢献するに違いないと考えている」と語る。

 IRRI広報のグラディス・エブロン(Gladys Ebron)氏によると、SPIKE遺伝子を注入したイネを農家に流通させる具体的なスケジュールはまだ決まっていない。

■遺伝子組み換え使わず遺伝子を導入

 エブロン氏によると、SPIKE遺伝子は、インドネシアで栽培されている熱帯日本型(トロピカル・ジャポニカ)の在来品種を活用した1989年に開始された研究で発見されたという。熱帯日本型品種は主に東アジアで栽培されており、世界のコメ生産量の10%程度を占めている。

 研究チームは次に、アジアの主要な稲作地域で広く栽培されているインディカ品種にSPIKE遺伝子を入れるための研究を行った。エブロン氏によると、論争を呼んでいる遺伝子組み換えの手法は使わず、交配による育種でSPIKE遺伝子をインド型品種に導入したという。

 IRRIによると、コメは開発途上世界で最も重要な食用作物で、貧困の中で暮らしているアジアの6億4000万人を含む全人類の半数以上が消費している。

 IRRIは、コメの価格を1トン当たり300ドル(約3万円)前後の手頃な水準で安定させるには、毎年800万~1000万トンずつ生産量を増やす必要があると試算している。IRRIによると世界のコメ生産量の約9割がアジアで生産されているという。

 1960年代に設立された非営利団体のIRRIは、イネの新品種によって収穫量を飛躍的に増加させた1960年代の「緑の革命」で重要な役割を演じた団体として広く認識されている。(c)AFP