【11月30日 AFP】マレーシア・ペナン(Penang)州の高等裁判所は29日、そろって2歳の女児に覆いかぶさり窒息死させた中国系マレーシア人の両親とおじの計3人に有罪判決を言い渡した。親族らは女児に悪霊が取りついているとして、悪魔払いの儀式を行っていた。

 チュア・ワン・ズエン(Chua Wan Zuen)ちゃん=当時(2)=は昨年8月、両親ら親族8人に悪霊を追い払うためとして数時間にわたって毛布をかぶせられ、押さえ付けられたことが原因で死亡した。

 被告らの弁護士によると、ペナン州北部にある高等裁判所はエンジニアの父親と伝統的な薬草医の母親、おじの3人に罰金1万リンギット(約32万円)を科した今年8月の一審判決を取り消し、それぞれ禁錮1年とする判決を下した。

 一方、一審で有罪判決を受けたおば(41)については、事件前に統合失調症の診断を受けていたことから無罪とし、精神科への入院を命じた。

■信仰治療師の助言を求めることも一般的

 弁護士は、「祈祷(きとう)の儀式」が必要だと親族らを説得したのはこのおばだったとして、「一家は信仰心のあつい仏教徒だ。ワン・ズエンちゃんには悪霊が取り付いていると考え、助けようとしたのだが、あまりに長い時間にわたって押さえ付けたため、窒息死させてしまった」と説明した。

 一審では祖母にも罰金1万リンギットの有罪判決が下されており、弁護側は刑が軽すぎるとしていたが、祖母の病気を理由に上訴を断念した。また一審でそれぞれ罰金5000リンギット(約16万円)の判決を受けたいとこ(22)と、保護観察になって釈放されたいとこ(17)についても上訴しなかった。

 過失致死罪で起訴された被告7人は当初、無罪を訴えていたが、裁判の途中で罪を認めていた。最も厳しい判決が下されれば、被告らは禁錮2年を科される可能性があった。

 イスラム教徒が大半を占める一方、中国系、インド系の国民も多いマレーシアでは、イスラム教では認められない信仰治療師の助言を求めることも一般的。暴力的な儀式が行われることはまれだが、2008年に禁煙と病気治療を目的とした儀式で、イスラム教徒の夫婦が親族らに殴り殺される事件が起きたことがある。(c)AFP