【11月26日 AFP】(一部更新)ニュージーランドの高裁は26日、世界初の「気候変動難民」の認定を求めた太平洋の島しょ国キリバスの男性の訴えについて、「説得力が不十分」として退ける判決を下した。

 キリバスのイオアネ・テイティオタ(Ioane Teitiota)さん(37)の弁護士は、国土の海抜が低いキリバスが海面上昇の脅威にさらされているとして、ニュージーランドの査証(ビザ)が期限切れになったものの、テイティオタさんを本国に送還するべきではないとして、訴えを起こしていた。

 キリバスは30を超える環礁からなる国で、環礁の多くは海抜数メートルしかない。テイティオタさんの弁護士は、本人と家族が本国に送還された場合に遭遇する困難を考慮して、ニュージーランド当局はテイティオタさんを難民として認定するべきと主張していた。

 高裁のジョン・プリーストリー(John Priestley)裁判官は26日、判決文の中で、キリバスが台風や洪水、水の汚染など気候変動に起因する環境悪化に直面していることを認めつつも、国際的に認知された国連(UN)の難民条約の下では、帰国した場合に迫害を受ける恐れがあることを難民の条件と定めており、テイティオタさんはこの条件を満たしていないと述べた。

 テイティオタさん側は、キリバス政府に対処不可能な気候変動により、「受動的な迫害」を環境から受けていると主張していたが、裁判官はこの主張を退けた。

 またプリーストリー裁判官は「より広いレベルで言えば、彼らの訴えが支持され、他の司法管轄区域でそれが採用されれば、中期的な経済的貧困、あるいは自然災害や紛争による即時的な影響、また気候変動がもたらしたと推定しうる困難などに直面した大勢の人々が、難民条約の下で保護される権利を有することになる」と述べ、「その意味で難民条約の範囲を変更することは、ニュージーランド最高裁の役目ではない。その変更を望むのであれば、それは各主権国家の立法機関の役目である」と続けた。

 国連は、ツバルやニュージーランド領トケラウ、モルディブなどと並んでキリバスを気候変動により「国土を失う」恐れのある島しょ国の1つとしている。(c)AFP