【11月25日 AFP】今季限りでのF1引退を表明しているレッドブル(Red Bull)のマーク・ウェバー(Mark Webber)は、24日に行われた13F1最終戦ブラジルGP(Brazilian Grand Prix 2013)の決勝で普段通りの見事な走りで2位に入り、涙は見せずにF1に別れを告げた。

 オーストラリア出身のウェバーは今年37歳。クイーンビーアン(Queanbeyan)でのデビュー戦からインテルラゴス(Interlagos)での最終戦まで、12年の道のりを歩んできた。

 そのウェバーは、自身通算42度目の表彰台フィニッシュを飾ったあとのパドックで、感情に飲み込まれそうになりながらもそれを抑え、威厳を保った。

 レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナー(Christian Horner)氏は、「レース前に話をして、最終ラップまで残っていてくれよと言った。それから、レースを楽しんで、すべてを味わい尽くしてこいと伝えたんだ。マークにとってはこれ以上ない最終レースになった」とコメントした。

 レースを楽しんだだけでなく、ウェバーは決勝のベストラップを刻む走りを見せた。レース後にはバイザーを上げてヘルメットを取り、最終戦の熱狂的な雰囲気を存分に味わった。

 ホーナー氏は無線で「最高のレースだ。見事な仕事だった」と叫び、「自分がしてきたことを誇りに思ってくれ。もちろんわれわれにとっても、きみは大きな誇りだ」とウェバーに伝えた。

 F1でこれまで215大会に参戦したウェバーは、通算9勝の成績と多くの思い出を残してF1界を去ることになるが、年間優勝のタイトルは最後まで獲得することができなかった。

 もしチームメートが、4連覇の偉業を達成したセバスチャン・ベッテル(Sebastian Vettel)でなければ、ウェバーにもドライバーズタイトル獲得のチャンスはあったかもしれない。それだけの能力があるドライバーだった。

 ウェバーも、「生きていれば困難にぶつかることは避けられないし、別の決断を下していれば違った結果になっていたかもしれない、と思う場面もやってくる」と認めた。

「けれど人は流れに従って、自分がその時下した決断を信じてやっていくしかないんだ」

 チームは2位に入ったウェバーのマシンにオーストラリア国旗をかぶせ、その横に「ありがとうマーク」と書かれたピットボードを置いた。最後の表彰式では、国旗が掲げられた。

 ホーナー氏は「マークはものすごいキャリアを築き上げてきた選手だ。彼が色々なことを達成していくところを見るのは、いつも喜びだった」と続けた。

「われわれが4年連続のコンストラクターズタイトルを獲得できたのは、マークの貢献によるところが非常に大きい。タフで、意志が強く、勇敢で、紳士的な、昔気質のレーサーだった」

 ウェバー自身は、一番気持ちが抑えきれなくなりそうだったのは、22日に行われた最後のドライバーズブリーフィングの時だったと語る。

「送迎会をしてくれて、みんなと話をしたりして良い時間を過ごした。17年にわたって切磋琢磨しながら競い合ってきた同業者というのは、とても大きな存在なんだ。だからすごく感傷的になってしまった」

 レッドブルが発表した公式ニュースで、ウェバーは「キャリアの中では、いくつもの感動的な出来事を経験してきた」と語り、次のように続けた。

「もしかしたら私は、生まれついての絶対敵な才能を持っていたわけでも、能力の面で誰よりも優れていたわけでもないしれない。けれど色々なものをかき集めて全力で努力すれば、すごい成果を残せると分かっていた」

「そうやって私は、自分よりも才能のあるドライバーを大勢倒してきた。彼らが私よりも真剣に取り組んでいなかったからだ」

「懸命に取り組むことがいかに大事か。私はそのことを身をもって学び、キャリアのほとんどをそうやって過ごしてきた。ロケットに乗ってトップの座にひとっ飛びできるようなキャリアなどありはしないんだ」

「F1で素晴らしい結果を残すことができたけど、同時に私にとっては、ここまでの道のり自体も驚くべきものだった」

「生まれ故郷のクイーンビーアンでそのまま過ごし、他のことを知らずに暮らしていれば、とても幸せだったかもしれない。でも別の人生や、別の場所にじっくり目を向け始めたら、『ワオ、なんて面白い生き方なんだ』って思える」

「実際、最高の道のりだったよ。人生では、目に見える結果よりも多くのものを手にしていることもあるんだ」

(c)AFP