【11月22日 AFP】太陽系外から飛来した高エネルギーの素粒子「ニュートリノ」が南極にある極寒の観測所で観測され、希少な新しい情報が得られたとの研究報告が21日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 論文の共著者の1人、米メリーランド大学(University of Maryland)のカラ・ホフマン(Kara Hoffman)教授(物理学)によると、この幽霊のような粒子は至る所に存在し、毎秒数十億個ものニュートリノがわれわれの体を通り抜けているという。

 だがわれわれの銀河系の最果て、あるいはさらに遠くのニュートリノが観測されることは極めて珍しく、専門家らによると、このような質量がゼロに近い高エネルギーの宇宙線は、超新星、ブラックホール、パルサーなどの宇宙の極限的現象により発生した可能性があるという。

 宇宙空間から飛来したニュートリノの検出は1987年に初めて観測して以来、史上2回目。しかも今回観測したニュートリノが持つエネルギーは前回のものより約100万倍高いという。

 南極の地下にある世界最大のニュートリノ観測所「アイスキューブ(IceCube)」の主任研究員で、米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のフランシス・ハルツェン(Francis Halzen)教授(物理学)は「これは、非常に高エネルギーのニュートリノが太陽系外から飛来していることを示す最初の兆候だ」と述べ、また「これは天文学の新しい時代の夜明けだ」と続けた。

 1987年に観測されたニュートリノは、大マゼラン雲(Large Magellanic Cloud)で発生した超新星に関係していたが、今回検出されたニュートリノがどのような種類の事象で発生したかは不明だ。

 今回の検出は、12か国が共同で南極の氷の中に建設した粒子検出器のアイスキューブにより、2010年5月から2012年5月の間に収集されたデータを調べた結果、高エネルギーニュートリノ28個を捉えていたことが分かったというもの。

 アイスキューブ広報担当でスウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)のオルガ・ボトナー(Olga Botner)氏は「われわれは現在、この観測の意義を高めること、そしてこの信号が何を意味しており、どこから来ているのかを理解することに懸命に取り組んでいる」と述べている。(c)AFP