【11月22日 AFP】雨粒が表面に当たって跳ね返るまでにかかる時間を短縮する方法を発見したとする研究論文が20日、英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。米研究チームによるこの発見は、衣料品から飛行機の翼まで、広い分野での応用が期待される。

 論文によると、米ボストン大学(Boston University)とマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の研究チームは、水滴が表面に接触している時間を大幅に短縮することに成功したという。

 高速度カメラで撮影した写真を見ると、水滴は表面に当たるとまず小さなパンケーキ状に広がり、次に水滴自体の表面張力で引き戻され、そして跳ね返る。

「水でぬれる」ことに関して重要なのは、水滴の振動に基づいて算出される接触の継続時間である。この時間をできるだけ短縮するために、物質科学者らがこれまで重点的に取り組んできたのは、水に対する表面の粘着性を低下させる作用を持つ、撥水性または疎水性の化学物質を開発することだった。

 だが今回の新しい研究では、物理的アプローチが取られた。

 表面に極小の突起を付けることで、水滴が表面に当たる際に、丸い水滴の対称性が壊れるようにした。すると水滴はより小さく、非常に不規則な形に分裂するため、単純な丸い形の場合に比べて、跳ね返りに要する時間が短くなるという。

 ボストン大のジェームズ・バード(James Bird)助教(機械工学)は「要するに、この接触時間が短縮されると、表面が乾いた状態に保たれる時間が長くなるわけだ。これは、様々な分野に応用できる可能性を持っている」と説明する。

 実験室条件下で使用された材料は「フルオロシラン」と呼ばれる疎水性化学物質でコーティングされたシリコンウエハーで、表面には極小の突起が刻まれた。

 実験では、コーティングされた表面での水滴の接触時間が無処理の表面に比べて40%短縮された。研究チームは、この短縮の割合を最大80%まで引き上げることを目指している。

 研究チームによると、鋼鉄やアルミ、布地といった他の材料でもこの表面構造を再現できる可能性があるという。早期の応用が見込まれる分野の1つは、飛行機の翼だろう。高い上空で水滴にさらされると、危険な着氷が発生するリスクが高くなる。(c)AFP