気候変動による「損失と被害」、対立する先進国と途上国 COP19
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【11月20日 AFP】ポーランドのワルシャワ(Warsaw)で開催されている国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で、台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)が引き起こした壊滅的な被害がひとつのスローガンとなり、フィリピンや他の発展途上国が、地球温暖化が将来もたらす被害への支援の保証を要求している。
この要求は、対立する交渉に新たな深い溝を生み出した。豊かな国々は、この要求を永遠の補償責任に閉じ込められるいわば罠としてみている。だが、世界で最も貧しい国々の多くは、気候変動のもたらす台風や海面上昇、干ばつ、洪水などに最もぜい弱な国々でもある。
130か国以上の発展途上国は現在、2015年に予定されている新たな気候変動協定に、先進国が資金援助した「損失と被害」の国際メカニズムを盛り込むことを呼び掛けている。豊かな国々は、温室効果ガス問題の原因である化石燃料の燃焼を始めた国々であるから、地球温暖化に歴史的な責任がある、というのが貧しい国々の主張だ。
途上国の提案する同メカニズムは、とりわけ、途上国が気候変動リスクを低減する技術と知識の基盤を確立するのに役立ち、被害を受けた国々の復興のために経済支援を提供するものになることが期待されている。保険制度の確立も議論に上っている。
このメカニズムをめぐる議論は、昨年カタールのドーハ(Doha)で開催された国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)を決裂寸前にまで追い込んだ──だが土壇場で、COP19で「制度的取り決め」を行うとの妥協がなされた。
しかしこれは容易な課題ではない。
「損失と被害の問題を協定に成文化することは、法的責任の追及につながる可能性がある」と、米ハーバード大環境経済学プログラム(Harvard Environmental Economics Program)のロバート・スタビンス(Robert Stavins)氏は指摘する。
第1に、個別の自然災害や損失が偶然の気象状況ではなく気候変動に起因するものであると確定する方法が不明確である。また、気候変動に関連した大惨事が生じた国に、国民に十分な保護や緊急対応を行わなかった責任がなかったかという問題もある。さらに、ブラジルや中国、インドなどの新興国の温室効果ガス排出量の急増が挙げられる。
これらの理由などにより、一部の富裕国は、既存の災害復興機構の下で「損失と被害」に対応するべきだと主張している。だが途上国側は、既存の機関が「損失と被害」への対策、特にゆるやかに進行するリスクへの対策を責務にしていないと反論する。
科学者らは、温室効果ガス排出の迅速な削減が実現しなければ、最大5度の気温上昇が起こりうると警告している。国際NGO「CARE(ケア)」のスベン・ハーメリング(Sven Harmeling)氏は「気候変動のもたらすあらゆる影響を食い止めることができる時期は過ぎた」と述べる。(c)AFP/Mariette LE ROUX