スティーブン・キング氏、「シャイニング」続編について語る
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【11月18日 AFP】ホラー作家のスティーヴン・キング(Stephen King)氏(66)に、何からアイデアを得ているかなんて聞かないほうがいい。彼自身、アイデアの由来については分からないのだから。
そんなキング氏だが、1977年に出版した「シャイニング(The Shining)」のインスピレーションをどこから得たかは覚えている。
当時、コロラド(Colorado)州に住んでいたキング氏が、ホリデーシーズンが終わる頃の週末に、妻と山へ行ったときだ。滞在したスタンリーホテル(Stanley Hotel)の宿泊客はキング氏らだけだった。
「私たちはかなりシーズンから外れていた。みんながチェックアウトしてるところに、チェックインしたのだから」と、キング氏は振り返る。「外は吹雪で風のうなる音が聞こえたし、いすは全てテーブルの上に乗せられていて、気味が悪かった」
夕食後、妻は部屋に帰っていった。誰もいない殺風景な食堂に残されたキング氏は、その「雰囲気に浸った」という。「それから私も部屋に戻ろうとしたとき、壁際の消防ホースを見て思ったんだ。『うわっ、もしこれがヘビになって襲ってきたらどうなるだろう』とね。部屋に帰るまでには、頭の中でストーリーが全部できていたよ」
「シャイニング」は、人里離れたホテルに閑散期の管理人としてやって来たジャック・トランス(Jack Torrance)が妻と息子を殺そうとする話だ。1980年には、スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)監督、ジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)主演で映画化された。
そして初版から35年以上たった今年、キング氏は続編「ドクター・スリープ(原題、Doctor Sleep)」を出版した。続編の主人公は、前作では超能力を持つ少年として描かれていた、ジャックの息子ダニー・トランス(Danny Torrance)だ。死んだ父と同じようにアルコール依存に陥り、暴力性を抱えた中年になるが、ホスピスで働きながら超能力を使って患者の安楽死を手伝っている。そしてテレバシー能力を持つ子供アブラ(Abra)と出会い、過去が呼び覚まされる。
いつもは続編を書かないと、キング氏は言う。「ストーリーを書き終えたら、登場人物とも別れる。彼らを嫌いになるわけではなく、次に何が起こるかなんて分からないからだ」
しかしダニーについては、「頭からずっと離れなかった」という。キング氏にしては珍しく気になった登場人物であり、このダニーに次は何が起こるのか、少しずつ「(キング氏の)頭の中で物語が作られていった」
「依存症は、家族内で受け継ぎやすい。だから、彼をアルコール依存症にして、父親よりうまく対処できるか知りたかった」
キング氏自身、アルコール依存症を克服している。「シャイニング」執筆中の酒量はかなりのものだった。
キング氏には続編を書くにあたり、読者を真に震え上がらせるだけの作品ができるか、という心配もあった。「シャイニング」を読んだ人たちは年齢を重ね、実生活で癌や死などの恐怖を体験しているからだ。
「『シャイニング』を一番怖い本だと思っている人は多い」と、キング氏は言う。「そんな人たちにはこう言うんだ。『当然でしょう。あなたは14歳で、サマーキャンプのベッドで布団をかぶり懐中電灯をつけながら読んでいた。怖くて当たり前だ』」
キング氏は小説のアイデアがどこから来るのかは分かっていないが、人を怖がらせる方法は熟知している。「読者が共感できるような登場人物をつくることがカギだ。そうすれば、彼らが危険な目に遭ったとき、読者も怖くなる」
さて、そんなキングを怖がらせるものは何なのか。「私は認知症を恐れている。知的能力が衰えることが、たまらなく怖い」(c)AFP/Helen ROWE