【11月15日 AFP】抗生物質が効かないウイルスや細菌にも効果を持つ薬剤の併用方法を突き止めたとする米国の研究チームによる研究論文が13日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 扁桃炎から結核に至るさまざまな感染症で利用される抗生物質だが、全ての感染症に対応できるわけではない。一部の細菌が抗生物質への耐性を徐々に獲得していくためだ。

 研究に参加した米ボストン(Boston)にあるノースイースタン大学(Northeastern University)のキム・ルイス(Kim Lewis)氏によると、今回の研究では、化合物であるアシルデプシペプチド(ADEP)を従来の抗生物質と一緒に用いることで、抗生物質だけでは効かない耐性を獲得した細菌への効果が確認できたという。

 研究チームは、抗生物質が活発に活動する細菌にのみ作用することから、ADEPの細菌を活発化させる作用に注目し、抗生物質とADEPとを併用することで耐性の問題を解決できると考えた。

 そこでアシルデプシペプチドと抗生物質を併用する実験を行い、シャーレ上での細菌の死滅、さらにはマウスの大腿に感染した細菌も完全に死滅したことを確認したという。

 この実験を通じて研究チームは、ADEPが細胞内にあるタンパク質のプロテアーゼを活性化させることを突き止めた。プロテアーゼは他のタンパク質を分解する特性を持つため、最終的に細菌内の細胞死を導くのだという。

 米製薬大手のビッグファーマ(Big Pharma)も、かつてADEPに強い関心を持っていたが、細菌での耐性獲得が早期みられたことから、開発を断念したという経緯がある。(c)AFP/Mariette LE ROUX