【11月15日 AFP】フランスのポリ・アンプラン・プロテーズ(Poly Implant ProthesePIP)が破裂する恐れの高い豊胸バッグを製造・販売し、世界規模で健康不安をもたらした問題で、フランスの裁判所は14日、ドイツの製品安全認証機関テュフラインランド(TUV Rheinland)に賠償を命じた。

 フランス南部トゥーロン(Toulon)の裁判所は、PIP製の豊胸バッグが安全規格に適合すると認証したTUVは、後に基準を満たさない工業用シリコンが使われていることを発見したとはいえ、検査義務と注意義務を怠ったと判断した。

 PIP製の豊胸バッグが最初に問題になったのは2010 年。埋め込み手術を行う医師らが、同社豊胸バッグの破裂率が異常に高いことを指摘した。65か国で約30万人の女性に埋め込まれたとみられ、翌2011年には世界各地で問題視された。ブルガリア、ブラジル、イタリア、シリア、メキシコ、ルーマニアの輸入代理店6社がTUVを相手取り、総額2800万ユーロ(約38億円)の損害賠償を求めて提訴していた。

 また、同社の豊胸バッグを埋め込まれた1700人近い女性も、TUVに対し1人につき1万6000ユーロ(約220万円)の支払いを求めており、TUVに要求されている損害賠償の総額は5300万ユーロ(約71億円) に上る。

 同裁判所はさらにTUVに対し、各原告が医療面と経済損失面での審査を待つ間、原告1人当たり3000ユーロ(約40万円)を支払うよう命令。このため、これらの全審査が完了してはじめて、TUVが負担する総賠償額が確定する。

 同裁判所の命令についてTUVの弁護士らは、同社は製造過程の審査を行ったのであり、豊胸バッグそのものの検査は同社の責務に当たらないと反論。弁護士の1人は、同社が「この判決に衝撃を受けた」として、上訴する意向を明らかにしている。

 このTUVに対する訴訟を受けて、欧州委員会(European Commission)は9月、製品安全認証を行う機関に対し、工場への抜き打ち検査と原料変更の有無の確認を義務付ける新規則を設けた。(c)AFP/Hugues JEANNEAUD