【11月12日 AFP】国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は12日、長期見通しの年次報告書を発表し、エネルギー市場が激動の時期に入ったと述べた。新たなエネルギーの価格差が欧州と日本の産業に打撃を及ぼし、エネルギー集約型産業で欧州と日本の世界シェアが脅かされるだろうとしている。

 IEAは、エネルギー集約型産業の世界輸出に占める欧州と日本のシェアは3分の1失われる可能性もあると分析している。

 またIEAは、化石燃料の補助金の段階的な廃止を提案した他、二酸化炭素(CO2)排出量が増加し続け、世界中の気温が上昇するだろうと警告した。

■シェールガス・オイルのブームと新興国の需要増

 IEAの見通しでは、今後30年間のエネルギー需要は発展途上国がけん引する。また、米国におけるシェールガスとシェールオイルのブームはすでにエネルギー市場を揺るがしているが、中国、インド、中東における需要の増加と合わせて、今後数年間でエネルギー市場の枠組みが作り替えられる可能性が高いという。

 シェールガスのブームの影響の1つは、米国企業のエネルギーコストの低下だ。米国外では、同国企業が競争優位を獲得しているとの懸念も出ている。

 また、ブラジルは既存の炭化水素エネルギーと再生可能エネルギーの両方で存在感を高めるという。

■エネルギー価格の変動が投資や企業戦略に影響

 IEAはさらに、「エネルギー部門の長年の教義が、書き換えられることになる。エネルギー価格の変動が産業の競争力に影響を及ぼし、投資判断や企業戦略に影響するだろう」と述べている。

 報告書は、米国の天然ガス価格は、欧州連合(EU)の輸入価格の3分の1で、日本の同5分の1だと指摘している。

 またIEAは、液化天然ガス(LNG)の取引拡大から各市場が連結されることにより天然ガスの価格は平均化されるだろうとの見通しを示す一方、電力価格差は今後も維持されるだろうと予測した。(c)AFP