【11月12日 AFP】政治的権利に対するロシア政府の弾圧に抗議するアーティストが10日、モスクワ(Moscow)の「赤の広場(Red Square)」で裸になり、自分の睾丸を敷石に釘で打ちつけるパフォーマンスを行った。男性は病院で手当てを受けた後、警察に身柄を拘束された。

 ロシアのウエブサイトで閲覧できる動画には、「レーニン廟(びょう)」の外で裸で座っているアーティストのピョートル・パブレンスキー(Pyotr Pavlensky)さんを毛布で覆う警察と驚いた表情の通行人が捉えられていた。

 病院で治療を受けた後、パブレンスキーさんの身柄は警察に移された。一夜明けた11日、予備審問の手続きを開始するため、警察はパブレンスキーさんを地裁へと移送したが、裁判所が警察の調書に事実誤認があるとして申請を受け付けなかった。その直後にパブレンスキーさんは釈放された。

 パブレンスキーさんの弁護人を務めるディナル・イドリソフ(Dinar Idrisov)弁護士によると、パブレンスキーさんが何らかの罪を犯したことを警察の調書は示せていないと裁判所側が判断したという。同弁護士は「パブレンスキー氏は何の違法行為を犯してもいないのに訴追されそうになったということを事実上、裁判所側が認めたに等しい。つまり赤の広場での逮捕は不当で、根拠がなかったということだ」と述べた。

 警察はパブレンスキーさんに、器物損壊など軽微なフーリガン行為の容疑をかけていたとされる。

 釈放されたパブレンスキーさんは裁判所前で露テレビ・レイン(TV Rain)に対し「(今回の行動で)専制的な支配に対し声を上げ、われわれは今、警察国家と対峙しているという事実に(社会の)危機感を喚起したかった」と語った。また「さっさとやらなくてはいけないことが一番難しかった」と述べた。

 パブレンスキーさんは当初、赤の広場の中央で抗議を実行するつもりだったが、屋外スケート場設営のために柵で囲われていたため、厳重な警備が敷かれているクレムリン宮殿により近いところでやらざるを得なかったと話している。

 パブレンスキーさんが耳目を集める抗議行動を行ったことは今回が初めてではない。2011年には、モスクワにあるロシア正教会の聖堂でウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領を批判する歌を演奏した女性パンクバンド「プッシー・ライオット(Pussy Riot)」のメンバー2人が投獄されたことに抗議し、自分の上下の唇を縫い合わせた。また今年5月にはサンクトペテルブルク(Saint Petersburg)市の庁舎の外で裸になって鉄条網で自分の体を巻き、逮捕されている。(c)AFP