【11月11日 AFP】(一部更新)猛烈な台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)の上陸で壊滅的な被害を受けたフィリピン東部レイテ(Leyte)州の州都タクロバン(Tacloban)で11日、女児が誕生した。破壊されたタクロバン空港の施設に作られた仮設医療センターで生まれたこの女児は、行方不明となっている祖母にちなんで「ベアトリス・ジョイ(Beatriz Joy)」ちゃんと名付けられた。

 泥だらけの床、割れたガラス、曲がった鉄骨やくぎ――台風の爪痕も生々しい空港施設の中、生まれた赤ちゃんのベッドとなったのはベニヤ板の切れ端だった。「とてもかわいい子。母の名にちなんでベア・ジョイと名付けました」と、喜びの涙を流す母親のエミリー・サガリス(Emily Sagalis)さん(21)は語った。

 サガリスさん一家はタクロバン近郊の自宅にいた際、木造の家ごと台風による大波にのまれた。それきり母親のベアトリス(Beatriz)さんの行方は分かっていない。サガリスさんも、波にさらわれた時にはもうお腹の赤ちゃんと一緒に死ぬんだと思ったという。

「この子は私の奇跡です」と涙ながらに語ったサガリスさん。傍らで、医療ボランティアから点滴を受けるベア・ジョイちゃんを抱くサガリスさんの夫ホベルトさんの目も涙で潤んでいた。

 台風30号ではレイテ島で1万人以上、またフィリピン中部でも数百人を超える犠牲者が出ているとみられ、フィリピン最悪の自然災害となる恐れが出ている。(c)AFP/Jason Gutierrez