【11月11日 AFP】独ミュンヘン(Munich)でアパートの一室からナチス・ドイツ(Nazis)が略奪した大量の絵画が見つかった事件で、絵画の多くは最終的に絵が見つかった部屋に住むコルネリウス・グルリット(Cornelius Gurlitt)容疑者に返還されるものと税関当局はみていると独週刊誌フォークス(Focus)が10日、報じた。

 ナチス政権時代の美術商の息子で、現在80代のグルリット容疑者の部屋から1400点を超える絵画が見つかったとのニュースは世界の注目を集め、絵画の本来の所有者だと名乗り出る人々が多数現れた。

 しかしフォークス誌によると、当局が押収した絵画のうち315点は、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)率いるナチ政権が「退廃芸術」として前衛芸術を弾圧した政策の一環で公共の美術館から没収したものだったことが判明した。つまり、これらの作品は当時、公共の財産だったことになり、美術館や元来の所有者、その相続人らが取り戻すことはできないという。

 ただ、194点にのぼる別の作品については、アパートで押収した書類から、売却を強要されたユダヤ人収集家たちのものと証明される可能性があり、かつての所有者やその相続人らが絵を取り戻せる機会はあるという。

 また、当局の報告によると、脱税と略奪された絵画を保有していた容疑でグルリット容疑者に対する捜査を続けても、同容疑者起訴の可能性は微妙だという。

 無職で世捨て人のような生活を送っているグルリット容疑者は、これまで、必要に応じて絵画を売却しながら、その売り上げで生活していた。

 グルリット容疑者の父親は、ナチス幹部と親しかった美術収集家のヒルデブラント・グルリット(Hildebrand Gurlitt)氏で、今回見つかった美術品の中にはパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)やアンリ・マチス(Henri Matisse)が描いた絵画や、これまで知られていなかった画家マルク・シャガール(Marc Chagall)やオットー・ディックス(Otto Dix)の作品も含まれている。(c)AFP