【11月7日 AFP】エイズウイルス(HIV)が人間の免疫システムを発動させることなく感染・増殖し、細胞内で姿をくらませるために使う「透明マント」のような役割を持つ物質を特定したとする研究論文が、英科学誌ネイチャー(Nature)で6日に発表された。

 さらに、実験室で培養された細胞内で、試験薬を用いて「マントをはがす」ことにも成功したといい、より効果的なHIV治療法の開発につながることが期待される。

 論文の主筆者、英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)のグレッグ・タワーズ(Greg Towers)氏は、研究に共同出資した英団体ウェルカムトラスト(Wellcome Trust)が出した声明の中で、「ウイルスへの感染の前に、体がウイルスを除去する手助けをするような治療法を、いつの日か開発できるかもしれない」と述べている。

 HIVは、免疫システムで重要な働きを担う白血球にとりつき、体内の防御システムに気づかれることなくしばらく潜伏し、増殖する。科学者らはこれまで、この仕組みの解明に取り組んできた。

 タワーズ氏らは、とりついた細胞の中でHIVが「味方に引き入れる」分子2種類を特定した。HIVはこの分子を使い、体内の防御システムから自身を守り、免疫反応を遅らせるという。

 チームは次に、臓器移植時の拒絶反応を防ぐために使われる免疫抑制物質シクロスポリンを基に、試験薬を作製。これを使った結果、ウイルスがこの2つの分子を「マント」として使うことを阻害できたという。(c)AFP