【11月7日 AFP】(一部更新)中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(Al-Jazeera)は6日、2004年に死去したパレスチナ解放機構(PLO)のヤセル・アラファト(Yasser Arafat)前議長の死因を調べていたスイスの科学者らが、放射性物質のポロニウムによる毒殺だった可能性が高いとの結論に至ったと報じた。

 カタールを拠点とする同テレビ局のウェブサイトに掲載された108ページに上る分析結果をまとめた報告書によると、前議長の遺骨を調べた結果「死因がポロニウム210による毒殺であるとの見方を、ある程度支持するものだった」という。

 アラファト前議長は2004年11月11日、フランスの病院で75歳で死去した。医師らは死因を特定できなかったが、夫人の希望により司法解剖は行われていなかった。

■予想外に多いポロニウム210と鉛210

 アラファト前議長の遺体は2012年11月、死因調査のために掘り起こされ、サンプルが採取された。ロシアの元情報局員で政府に批判的だったアレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏が2006年にロンドン(London)で暗殺された後、アラファト氏についても毒殺の疑惑が高まったためだ。

 スイスの専門家10人がまとめ、5日に発表された報告書には、「毒物と放射能毒性に関する検査を実施したところ、分析を行ったサンプルの多くから、予想外に多いポロニウム210と鉛210が検出された」と記載されている。

 過去に一部で「議長の所持品から通常より高い値のポロニウムが検出されたのはたばこの煙が原因」と報じられたことがあるが、報告書は、その仮説で考えられる値に比べ、最大で20倍のポロニウムが議長の骨と軟組織から検出されたと指摘し、たばこの煙が原因という可能性を明確に否定した。

 一方、イスラエル外務省は6日、アラファト前議長の死因に関する調査は公正に行われていないとの見解を示し、毒殺疑惑を一蹴した。

 報道官はAFPの取材に対し、「(前議長の)スーハ(Suha Arafat)夫人が夫の後継者たちに闘いを挑むという筋書きのメロドラマだ。第100話の放送も超えたのではないか。調査に当たっている2チームは関係者からの委託を受けて分析を行っており、独立していない。いずれにしてもイスラエルには何の関わりもないことだ」などと話した。(c)AFP