【11月6日 AFP】化学兵器禁止条約に基づいて導入された国内法は、夫の不倫相手を毒殺しようと企てた女性にも適用され得るのだろうか──?

 米連邦最高裁は5日、その答えは「ノー」であるとの見解を示した。アンソニー・ケネディ(Anthony Kennedy)判事は同日行われた口頭弁論で、「この裁判が行われていること自体が、本来考えられないことだといえる」と発言。

 また、サミュエル・アリート(Samuel Alito)判事は冗談交じりに、「チョコレートは犬にとっては毒だから」という理由で、「ハロウィーンにチョコレート菓子を配ったら訴追される可能性があるのか」と尋ねた。

■事件はどう裁かれるべきだったのか

 政府を訴えたのは、ペンシルベニア(Pennsylvania)州在住の微生物学者、キャロル・ボンド(Carol Bond)さんだ。ボンドさんは、夫の浮気相手で妊娠中だった自身の友人を殺害しようと、被害女性の自宅の郵便受けと車に毒物のヒ素と重クロム酸カリウムを付着させるなど、化学兵器を使用したとして2つの罪に問われ、2007年に禁錮6年の有罪判決を受けた。

 昨年釈放されたボンドさんは、自らの裁判で判決に適用された連邦法は元来、テロリストによる化学兵器の使用を防ぐためのものであり、個人を訴追するためのものではないとして、最高裁に異議申し立てを行った。

■政府が不利?

 ボンドさんの弁護士、ポール・クレメント(Paul Clement)氏は、「この法律が、化学薬品の悪意ある利用すべてに適用されるのであれば、それは明らかに議会の権限を越えている」と主張。また、「警察の権限」についても同様であり、これに責任を負うのは連邦政府ではなく各州当局だと訴えた。

 連邦最高裁について法律の専門家らが意見を寄せる「ScotusBlog(スカウツブログ)」には、「政府が敗訴するだろう。せめて大差ではなく、わずかな差での負けになってくれることを願うべきだ」との意見が投稿されている。

 連邦最高裁の判決は、来年6月までに下される見通しだ。(c)AFP