【11月5日 AFP】バングラデシュ政府が設置した委員会は4日、衣料品産業の労働者の最低賃金を76%引き上げる勧告を採決した。ただ引き上げ額は労働組合の要求額を大きく下回っており、仮に引き上げが実施されたとしても依然として世界最低水準の賃金であることに変わりはない。

 政府当局者、衣料品製造メーカー、労働組合代表らからなる委員会は、1135人が死亡した縫製工場複合施設の倒壊事故を受けて、衣料品業界で働く同国の労働者400万人の最低賃金を現行の月額3000タカ(約3800円)から5300タカ(約6700円)に引き上げることを勧告した。

 4月にラナプラザ(Rana Plaza)で起きた世界最悪規模の産業事故は、バンングラデシュにおける衣料品業界の劣悪な労働環境と低い賃金に対し、かつてないほど世界の注目を集めた。

 最低賃金の引上げは賛成多数で採決されたが、高額すぎるとして工場経営者が反対するなど、票は割れた。

 工場経営者代表のアルシャド・ジャマル・ディプ(Arshad Jamal Dipu)氏は、引き上げが実施されれば、中国に次いで世界2位の規模を誇るバングラデシュの220億ドル(約2兆2000億円)規模の衣料品産業が悲惨な結末に見舞われるだろうと警告を発している。

 ディプ氏はAFPの取材に、「現実感を欠いた感情的な決断だ。われわれの競争優位が損なわれるだろう」と語った。

 勧告が法制化されるためにはまだ政府の承認が必要だが、政府は2006年と10年に行われた同委員会の過去2回の勧告を採用している。またこれに先立って、政府は11月までに委員会の勧告に従って最低賃金の引き上げを行うことを約束していた。(c)AFP/Kamrul KHAN