【11月4日 AFP】インドは3日、開発期間わずか15か月で低予算の火星探査機打ち上げのカウントダウンを開始した。同国史上最も野心的でリスクの高い宇宙ミッションとなる。2億キロ以上離れた火星に到達する最初のアジアの国となることで、自国の優れた技術力を世界に示したい考えだ。

 大型冷蔵庫ほどの大きさで重さ1.35トンの無人探査機は、国産ロケットに搭載され、現地時間の5日午後2時38分(日本時間5日午後6時38分)に同国南東部の宇宙センターから打ち上げられる予定。

 探査機には火星の大気を測定するための高性能センサーが搭載されており、メタンの痕跡検出に期待が寄せられている。メタンの痕跡検出は、何らかの原始的生命体の存在につながる可能性を示すものとなる。

■打ち上げにはインドの「ジュガール」も

 火星探査の成功はインドにとって国家威信ともなりえる。同国が2008年に成功させた月への無人ミッションは、月での水の存在の証明を助けており、これは米国の元宇宙飛行士ニール・アームストロング(Neil Armstrong)氏が月に足を踏み入れてから39年後に、また1つの「大きな飛躍」となった。

 成功はまた、世界で最も安価な自動車の生産国で、低コスト技術革新の主導国としてのインドの名声を高めることにもつながる。2012年8月に発表された同国の火星探査計画の予算はわずか45億ルピー(約72億円)に抑えられている。

 しかしインドには火星への軌道上に探査機を直接打ち上げることができる大型のロケットが存在しない。そのためインド宇宙研究機関(Indian Space Research OrganisationISRO)は、同国が得意としている、安価な次善策を創意工夫する「ジュガール(Jugaad)」の考えを取り入れている。

 ISROは、打ち上げから約1か月間、探査機を地球周回軌道上で周回させる。その間に速度を上げて地球の引力から脱出、火星への軌道に乗せる計画だ。

 5日午後の打ち上げ後、米航空宇宙局(NASA)は宇宙通信施設3か所からの監視を通じてISROを支援する。NASAも同月中に火星探査機「メイブン(MAVENMars Atmosphere and Volatile Evolution)」を打ち上げる予定になっている。

 これまでに火星への到達に成功しているのは、米国、ロシア、欧州連合(European UnionEU)だけだ。中国は2011年、ロシア製ロケットに搭載した同国の探査機の打ち上げに失敗した。日本の火星探査機「のぞみ」も2003年に火星周回軌道への投入が断念されている。(c)AFP/Adam PLOWRIGHT