【11月1日 AFP】(一部更新)イタリアの警察当局は10月31日、養育権争いの渦中にいる子供たちを拉致し、伊シチリア(Sicily)島を拠点に高速ボートを使って欧州各地に密入国させていたとみられる元特殊部隊員らによる国際組織を摘発したと発表した。

 警察発表によると、この国際組織は「メンバーの多くがかつて特殊部隊に所属していた元軍人で、高額報酬を支払う用意さえあれば誰が相手でも、熟練の作戦実行能力を提供していた請負業者」。ノルウェーの警備会社「ABPワールド・グループ(ABP World Group)」を隠れみのとして運営され、「国際カップルの間に生まれ、親権争いの種となった子供の『連れ戻し』などのサービスを提供していた」という。

 メンバーはロシア製の銃器や催涙スプレー、テーザー銃で武装。多額の報酬と引き換えに、養育権争いの渦中にいる子供を親権が認められている親の元から拉致して、もう一方の親元に連れて行っていたとされ、その過程で「子供の生命を危険にさらした」と警察は指摘している。

■逮捕者に五輪メダリストも

 最初の「作戦」は2012年10月に実行され、北アフリカのチュニジアで拉致した男児1人を、シチリア島パレルモ(Palermo)を経由してノルウェーに密入国させた。

 2件目もチュニジアの子供が拉致対象で、同年11月に実行が計画されていたが、警察が介入し実行グループを逮捕した。この「作戦」では当初ヘリコプターで子供を強奪する予定だったが頓挫し、ボートを使う計画に変更されていたという。

 この他にも、地中海のキプロスや中東レバノン、エジプト、ウクライナで計4件の拉致計画が立てられていた。

 パレルモの警察当局はこれまでにイタリア人3人と、ウクライナ人の女1人を逮捕した。女はセーリング競技の元五輪メダリスト、ラリサ・モスカレンコ(Larysa Moskalenko)容疑者で、実行犯らにボートを提供した疑いが持たれている。

 また、ノルウェー人2人とスウェーデン人1人に逮捕状が出されているが、このスウェーデン人は昨年11月にチュニジアで身柄を拘束され、現在も同国で拘束下にあるという。(c)AFP