【10月29日 AFP】誰でも、欧州の暴風雨に自分の名前を付けることができる──その名誉に対価を支払う用意があれば。

 独ベルリン(Berlin)のベルリン自由大学(Berlin Free University)気象学研究所の提供する独特のスポンサープログラムでは、199ユーロ(約2万7000円)を支払えば暴風雨の名称を決めることができる。実際、28日に英国とフランスを襲った強い暴風雨も、このプログラムを通じて「クリスチャン」という名称がつけられた。

 またこのプログラムでは、さらに100ユーロ(約1万3000円)支払えば、高気圧にも名称を付けることが可能だ。

 ベルリン自由大学は2002年からこのプログラムを実施しているが、英国メディアが今回の暴風雨を「セント・ジュード(St Jude)」と命名するのを止めることはできなかった。28日が、キリスト教の守護聖人、聖ジュードの祝日であることにちなんだ名称だ。

 高気圧よりも暴風雨の名称が低価格なのは発生頻度が高いため。高気圧は年に50ほどだが、暴雨風は年150~160発生している。このプログラムを通じて、気象学研究所は年間2万5000~3万ユーロ(約340万~400万円)を売り上げている。

 今年は低気圧には男性名、高気圧には女性名を募集しているが、来年は逆になる。従来は、暴風雨には女性名、高気圧には男性名と決まっていたが、女性権利団体から抗議が多く、1年ごとに切り替えることにしたという。スポンサーの80%はドイツ人で、次いでスイスとオーストリアが多い。日本人が名付けた欧州の暴風雨もある。

 だがある1人のスポンサーは、暴風雨に命名したことを後悔している。

 ドイツのウルフガング・シュッテさんは、2010年の激しい暴風雨の名称公募にシンシア(Xynthia)という名称を提案した。だが、その後、この名称が死や破壊と常に関連づけられるようになったことを心苦しく思っているという。

「天気予報でもしかしたら1度だけでも使われて、その後は世間から忘れ去られることを願っていたんだ」とシュッテさんはAFPに語った。(c)AFP