企業批判記事で拘束の中国人記者、テレビで謝罪
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【10月27日 AFP】中国国営の中国中央テレビ(China Central Television、CCTV)は26日、政府が株式の一部を所有する企業の批判記事を繰り返し書いていたことで身柄を拘束された中国の新聞記者が内容の一部が誤りだったと述べて謝罪する様子を放送した。CCTVは、記者が「事実かどうか確認されていない、誤った記事を書いたことを認めた」と伝えている。
大手建設機械メーカー、中連重科(Zoomlion)の「財務問題」に関する一連の記事を執筆していた新快報(New Express)の陳永洲(Chen Yongzhou)記者は、「企業の評判を傷つけた疑い」で今月18日に身柄を拘束された。
緑色の受刑者服を着た陳記者はテレビカメラの前で、「(批判記事を書いたのは)主にお金が欲しかったから、有名になりたかったからです…でも、悪いことをしたと自覚しています。ジャーナリストとして、職業倫理に反することをしました…恐らく(こうしたことを行っているのは)、業界内に私1人ではないでしょう。報道界は全体として、私の一件から学ぶべきです」と話した。
■「誤った記事」とは──?
陳記者は一連の記事の中で、中連重科が利益を水増しして公表したり、自社株の買い占めを行ったりしたことで、「国家資産に損失をもたらしている」と批判していた。
これに対し、中連重科の代理人はニュースを提供する中国のポータルサイト新浪(Sina)のインタビューに応じ、新快報の記事には「根拠がない」と反論している。
中連重科は株式の約20%を国が保有し、香港(Hong Kong)と深セン(Shenzhen)の両証券取引所に上場している。時価総額は80億ドル(約7800億円)を超える大手企業だ。
■報道界は異例の対応
同記者の拘束後、新快報は23日に1面ぶち抜きで釈放を求める内容の論説記事を掲載。批判記事については内容の見直しを行っており、大きな誤りはなかったと主張した。
中国の報道機関が当局に公然と反抗するのはまれなことで、このことは世界各国のメディアでも大きく取り上げられたほか、中国国内のインターネット上でも同記者に同情する声が上がっていた。しかし、「記者たちを守る」としていた新快報は陳記者の姿がテレビで放映されて以降、コメントを控えている。
このほか、中国政府のメディア統制で中心的な役割を果たしている国家新聞出版広播電影電子総局 (General Administration of Press and Publication, Radio, Film and Television、GAPPRFT)は、陳記者が拘束されたことについて「非常に懸念している」と発表するとともに、「合法的な報道の権利を守る」と明言した。報道の自由に関わる問題に政府機関がこのような発表をするのは異例だ。
国内の報道機関は大半が今回の記者の拘束に批判的で、警察による職権乱用だと批判している。(c)AFP