【10月23日 AFP】オランダの美術館からポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)やクロード・モネ(Claude Monet)、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)などの名画7作品を盗み出したことを認めたルーマニア人の男が22日、犯行を容易なものにした美術館側にも責任があるとして、美術館を訴えることも辞さない考えを明らかにした。

 オランダ・ロッテルダム(Rotterdam)のクンストハル(Kunsthal)美術館で昨年起きた事件は、世界の美術界を震撼(しんかん)させた。合計1800万ユーロ(約24億円)の価値があると推定される絵画7点は、わずか3分の間に鮮やかな手口で盗まれた。オランダ当局によると、いずれの作品にも防犯アラームは取り付けられていなかったという。

 事件に関与した疑いで起訴された6人のうちの1人、ラドゥ・ドガル(Radu Dogaru)被告は22日に出廷し、「あれほどの価値のある作品を、非常に手薄な警備の下で展示していたとは考えもしなかった」と述べた。

 同被告の弁護人は記者団に対し、美術館側に過失があったのは明らかだと語り、警備上の不備の責任に関する回答が得られなかった場合は、オランダまたはルーマニアで訴えを起こすことを検討していると述べた。裁判で過失が認められた場合、美術館側も「損害賠償を分担することになる」という。ドガル被告には、保険会社から数百万ユーロ(数億円)の損害賠償が請求されている。

 2012年10月16日未明に起きた事件では、ピカソの「アルルカンの頭部(Tete d'Arlequin)」、モネの「ウォータールー橋(Waterloo Bridge)」、ゴーギャンの「Femme Devant une Fenetre Ouverte, dite La Fiancee(開いた窓の前の女、婚約者)」などが盗まれた。

■作品の行方は不明

 警察の捜査に対しドガル被告の母親が証拠隠滅のために盗難絵画を燃やしたと供述していることから、名画が失われた可能性がある。母親は後に供述を撤回したが、自宅のかまどからは油絵3点の燃えかすと、19世紀末以前に使用されていた額縁用のくぎが発見されている。

 ドガル被告は22日の公判で「絵画は燃やされていない。どこにあるか分からないが、たぶん売られたと思う」と供述。かまどから見つかったくぎについては、一家が所有していた19世紀のイコンのものかもしれないと主張したが、ルーマニアの専門家は先月、その可能性を否定している。

 ドガル被告は、有罪となれば最大で20年の禁錮刑が科される可能性がある。次の公判は11月19日の予定。

 窃盗罪で起訴された6人は、全員がルーマニア東部の同地域の出身でオランダ在住だった。売春婦らとの交際についても報じられている被告らは、美術品に関する知識はほとんどなく、貴重な美術作品を盗み出すためにたまたまクンストハル美術館を標的としたとみられている。(c)AFP/Mihaela RODINA