【10月23日 AFP】35年前に銃撃されて以来車いすで生活している米アダルト業界の大物実業家ラリー・フリント(Larry Flynt)氏(70)が、自分を襲った犯人について、来月予定されている死刑執行を中止するよう米当局に求めている。

 フリント氏は1978年3月、同氏自身がわいせつ罪を問われる裁判が開かれていたジョージア(Georgia)州の裁判所前で、白人至上主義の連続殺人犯、ジョゼフ・フランクリン(Joseph Paul Franklin)死刑囚に銃撃された。1977年にシナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)前で別の男性を殺害した罪で死刑判決を受けた同死刑囚の刑は、11月に執行される予定となっている。

 フリント氏は17日、エンターテインメント情報誌ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)の意見欄への投書で、銃撃によって自分が損傷したのと同じようにフランクリン死刑囚を身体的に傷つけたいとは思うが、死んでほしいとは思っていないと述べた。

 同氏は「銃撃事件以来、フランクリン(死刑囚)と面と向かって会ったことは一度もない。彼と1時間ほど部屋の中で2人きりになって、ワイヤカッターとプライヤーで私が受けたのと同等の傷を与えてやりたいとは心底思う。しかし、私は彼を殺したいとは思わないし、彼が死ぬのを見たくもない」と語っている。

 またフランクリン死刑囚の動機については「私が狙われたのは、私が発行していた(ポルノ雑誌)『ハスラー(Hustler)』で黒人男性と白人女性の写真を掲載したからだ。彼(フランクリン死刑囚)はそれまでにシナゴーグをいくつか爆破しており、黒人を嫌い、ユダヤ人を嫌っていた」と述べている。

「私こそ(死刑の)決定によって大喜びするはずなのに、喜んでいない。長年、この車いすの上で、このことについて考え続けてきた。思い至ったのは、死刑の背後にある唯一の動機付けとなる要因は復讐であって、正義ではないということだ。国民に殺人を禁じている政府自らが、人殺しに手を染めるべきではないと私は固く信じる」

(c)AFP