【10月22日 AFP】乳児の包皮を使用して毛包(もうほう)のクローンを作り、マウスに移植する新しい発毛方法の実験が行われ、初期段階の成果を得たとの研究報告が21日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 現在の脱毛対策は、頭皮から採取した毛髪を別の頭皮へ移植したり、抜け毛の抑制や増毛を促す薬剤の使用などが中心だが、新しく研究されている発毛方法はアプローチの仕方が大きく異なる。「対照的に、私たちの方法では患者自身の細胞を使用して、実際に新しい毛包を成長させる可能性を秘めている」と米コロンビア大学メディカルセンター(Columbia University Medical Center)のアンジェラ・クリスチアーノ(Angela Christiano)教授(遺伝発育学)は話す。

 今回の研究の画期的な点は、毛包の形成で主要な役割を果たす毛乳頭細胞を使って、毛髪の成長を促す新しい方法を試みたことだ。これまで毛乳頭細胞は、実験用プレートの二次元培養では繁殖できなかった。そこで、毛乳頭細胞を移植しやすいマウス実験に着想を得た研究チームは、三次元組織培養で人間の毛乳頭細胞のクローンを作成した。

 組織は、同センターで包皮切除術を受けた乳児の包皮を使用した。乳児の包皮を選んだのは、人間の真皮乳頭を刺激し、皮膚内部の毛包に働き掛けるだけではなく、毛包の運命を完全に書き換えるよう患者の頭皮に働き掛けるからだという。

 新たに成長した人間の皮膚組織と真皮乳頭をマウスに移植したところ、7匹中5匹で発毛した。毛髪は提供者の遺伝子に適合し、最低6週間持続した。

 チームではこの技術をさらに十分に研究し、臨床試験を行える段階まで到達すれば、脱毛症の女性や、老化による薄毛や脱毛の初期段階に悩む男性、皮膚と毛包の両方を必要とするやけどの患者らの治療に効果を発揮すると期待している。

 論文の共著者、英ダラム大学(Durham University)のコリン・ジャホダ(Colin Jahoda)教授(幹細胞学)は、今回の発見を「重要な1歩」と位置付け、臨床試験がまもなく行われることに期待を示した。

 同氏はAFPに対して、根本原理の証明はしたものの今後解決しなければならない「美的観点からの問題」はたくさんあると述べ、「毛の発育、毛髪の色、正しい方向に生えるかなど、人々はまさにそうしたものを求めるだろうが、現段階では十分ではない」と話している。(c)AFP