自費出版が世界でじわり増加、フランクフルト書籍見本市
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【10月19日 AFP】今月9~13日まで開催された世界最大の書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア(Frankfurt Book Fair)」では、ともすれば厄介なことにもなる出版社との関係を避けつつ読者に作品を届けるため、著者が自費出版を選ぶ傾向が強まっているとの話が業界関係者から相次いだ。
フランスの自費出版業界大手「ブックス・オン・デマンド(Books on Demand)」のフロリアン・ジュペール(Florian Geuppert)氏は「人は皆、自分の話をしたがる。ソーシャルネットワークや新たな技術の急速な普及のおかげで、多くの障害が取り払われてきている」と話す。
同社が制作を請け負う自費出版物の年間出版点数は、紙版の書籍が300万点、電子書籍は1万7000点で、世界でも最多の部類に入る。しかし、フランスの2012年の書籍市場における自費出版の割合はわずか3%。一方、自費出版市場が拡大している米国では17%となっている。
ジュペール氏によると、原稿を出版社に却下されたから自費で出版するという人もいるが、出版過程をすべて管理できる立場でいたいという理由が大半だという。
■従来出版よりも多い報酬、早いプロセス
さまざまな人が自費出版を選んでいる。自費出版サービスを提供するドイツの「Epubli」のマーケティング担当責任者、マルグリット・ジョリー(Marguerite Joly)氏は「おばあちゃんのレシピを出版したいという少女や、初作品を出版する人、出版社のマーケティングに失望したプロの作家もいる」と話す。
自費出版は従来の出版社を介するよりも制約が少ない上、金銭的な報酬もより多く見込める。出版形態にもよるが、従来の出版社を介した場合、著者の取り分は売り上げの最大6%。一方、自費出版の場合は15~80%だ。ジョリー氏は「発行とほぼ同時に、アマゾン・ドットコム(Amazon.com)やグーグルプレイ(Google Play)、アップルストア(Apple store)など大きな流通プラットフォームに乗せることができる」ことが強みだという。
複数の著書がある人材育成コーチングの専門家、ゴードン・ミューラーエッシェンバッハ(Gordon Mueller-Eschenbach)氏は「自費出版にとても満足している」と話す。出版社は通常、1年後の出版を計画するが、内容によってはそれまで待てないこともあると指摘。「自費出版にしたので、書き上げてから1か月後にアマゾンで販売できた」という。また、出版の自由が制限されている国でも、クリック一つで購入できる自費出版は、重要な出版物を素早く市場に出すことができ効果的だと述べた。
■執筆以外の作業が必要、失敗例も
増加傾向にある自費出版だが、発行までの過程で問題が生じる可能性もある。出版社の支援や出資がなければ、著者は自分で本の体裁を整えたり、販促や流通業者とのやりとりも行わなければならない。フランスの書店労働組合の会長、マテュー・ド・モンシャラン(Matthieu de Montchalin)氏は「自費出版ではハッピーエンドもよくあるが失望も多い」と述べ、「皆が作家になれるわけではない。小説家の純真さに付け込む金融仲介業もある」と忠告した。(c)AFP/Benoit TOUSSAINT