【10月13日 AFP】世界各地の紛争に関する優れた報道を行ったジャーナリストを表彰する第20回「バイユー戦争報道特派員賞(Bayeux-Calvados War Correspondent Award)」の受賞者が12日発表され、フランス通信(Agence France-PresseAFP)のカメラマン数人も受賞した。今年の受賞者は、シリア内戦を伝えたジャーナリストらが大半を占めた。

 AFPのイタリア人カメラマン、ファビオ・ブッチャレッリ(Fabio Bucciarelli)氏(32)は、昨年シリアのアレッポ(Aleppo)で起きた戦闘を撮影した一連の写真「Battle to Death(死の戦い)」で 写真賞を獲得した。同氏はスーダンやマリなどでも紛争取材経験を持つ。

 受賞作についてブッチャレッリ氏は、「ちょうどシリア政府軍がアレッポのシャール(Shaar)地区を攻撃した日に撮影した。完全に正気の沙汰ではない混乱状態の中、至る所で生存者や負傷者がショック状態で逃げ惑いながら『アッラー・アクバル(神は偉大なり)』と叫んでいた」と当時を振り返った。

■今年の米ピュリツァー賞受賞者に読者賞

 また、AFPのフリーランスカメラマンであるハビエル・マンサーノ(Javier Manzano)氏は、昨年アレッポでシリア反体制派の兵士らを撮影した一連の写真で、特別賞の「読者賞(Public Prize)」を受賞した。うち一枚は、今年の米ピュリツァー賞(Pulitzer Prize)を獲得している。

 マンサーノ氏は今年5月、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にある報道とジャーナリズムの博物館「ニュージアム(Newseum)」で行われた「Inside Media: Pulitzer Prize-Winning Photographers(報道の裏側-ピュリツァー賞に輝いたカメラマンたち)」で、「自家用車やタクシー、写真にあるような小型トラックさえも、走る車は全て負傷者を病院に搬送するために使われていた。病院と言っても、実際には信じられないほど小さな部屋で、負傷者であふれ、床は血の海だった。シリア取材中で最も常軌を逸した一日だった」と語っていた。

 一方、シリア西部にある十字軍時代の城塞「クラック・デ・シュバリエ(Krak des Chevaliers)」で戦う反体制派の兵士らを取材したAFPのダジェラレイ・ベライド(Djilali Belaid)氏が映像部門で2つめの賞を獲得した。

 そのほかの受賞者は、シリアの首都ダマスカス(Damascus)の前線についての記事で化学兵器の使用を伝えた仏紙ルモンド(Le Monde)のジャンフィリップ・レミ(Jean-Philippe Remy)氏が印刷部門の最高賞を獲得。英国放送協会(BBC)のベン・アンダーソン(Ben Anderson)氏は、アフガニスタンのヘルマンド(Helmand)地方の取材で映像部門の最高賞に輝いた。

 1994年に創設されたバイユー戦争報道特派員賞は、紛争とその影響を受けた人たちや、自由と民主主義を守る戦いについての報道を表彰している。今年は著名戦場カメラマンのジェームズ・ナクトウェイ(James Nachtwey)氏が審査員長を務め、約60点の報道作品が審査された。(c)AFP