【10月13日 AFP】福島第1原子力発電所の半径20キロ圏内に置き去りにされた牛について、放射性物質に日常的にさらされたことによる精巣や精子数への影響はないとの調査結果が、8日付の英科学誌ネイチャー(Nature)系サイト「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された。

 東北大学(Tohoku University)などの研究チームは、原発から半径20キロ圏内で2011年9月と12年1月に捕獲された雄牛2頭と、雄の胎児を対象に調査を行った。精巣は放射線による影響を受けやすいため、放射線被ばくで精巣の形態や機能に変化が生じる可能性があると考えたという。

 調査の結果、牛の体内に蓄積した放射性物質のセシウム134と、半減期が比較的長いセシウム137の濃度はすべての器官においておおむね同水準だったが、骨格筋ではこの水準を大きく上回った。精巣のセシウム濃度は骨格筋の半分強ほどで、他の器官とは同水準。精子の数と構造、大きさに異常はみられなかった。

 研究チームは今回の調査について、福島原発事故で放出された放射性物質が性と生殖に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)に及ぼす危険性の解明に役立つと期待する一方、調査の検体数が少ないため、確定的な結論に達するにはさらに研究が必要だとしている。(c)AFP